【d!】貴方と幸せになりたくて (ページ9)

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その日一日だけでも、途轍もなく甘ったるいもので

ショッピとチーノくんに
こういうことになったのでと一応連絡を入れたその日
帰り際に迎えに来た彼は優しい声で私を呼んで
指を絡めて手を握り、そばを歩いた

絶対手を握っている訳ではないけれど
彼の細部まで届く素朴な気遣いはすごくて…

家まで送って貰った時
お礼を言って玄関の方へ向いた私を引き留めた彼に両頬を手で包まれて
額へ優しいキスを受けた

外で

何も言えなくなって真っ赤になる私を
彼は可愛いと愛おしそうに撫でて
明日迎えにくるからと手を振り来た道を戻って行った

半日分もないだけで、甘さの過剰摂取が過ぎていた

本気なんだとよく分かる

だけど…それがいつまで続くことやらと
酷く冷静な頭が期待をやめろと訴えていた

同時にあのトラウマの様な夢を思い出す

銀色のナイフが振り下ろされる瞬間を
悲しそうに笑って愛を口にする…同じ姿の男を

「っ………流され、そう…」

ベッドに倒れ込んで…
あの本気で愛を抱いた様な笑顔を思い出して
本日のみでもされたことが多くて、真っ赤になる
顔、熱い

…でも、男性って…
付き合ったらそこまでみたいな人が多いこともあるって聞くし
そこまではこうやって愛情表現がたっぷりだったとしても…

いやそんな括りにするのは良くないだろうな

けど…最初だけだろう、きっと

…明日のご飯は……いいや…
おにぎり作って持っていこう
今日はもう…疲れた

目を閉じれば、夢の中へ
あの夢が訪れません様にと祈りながら

…

「………」

夢か

目の前に真っ黒な綺麗な毛艶の仔猫がいて
そっと抱き上げると、仔猫はゴロゴロと喉を鳴らして目を細めた
人懐っこい…

ゾム
「猫やん、何してんの？」

「…ぇ………抱っこ」

初めてだった
殺そうとしない彼に夢で出会うのは

ゾム
「随分懐いてんな…」

だが彼の指が猫をうりうりと撫でると
猫はまた一層嬉しそうにクルクルと鳴く

初めて、青空の下
夢の中で…幸せそうな笑顔をする彼に出会った

「ゾムさん」

ゾム
「ん？」

「…貴方は…」

＿＿＿＿＿。

だが、夢はそこで途切れて…
目覚まし時計の鳴る音がした