【d!】貴方と幸せになりたくて (ページ7)

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翌日、昼休み
彼は…鳥井さんは来た

心していたつもりだったけれども
そんなんじゃ足りないくらいだって、心臓がビクビクと怯えている
彼の呼ぶ声に連れられた先は、校舎裏の庭

春先で心地の良い、時に肌寒いその気温の中
彼は此方を向き直り…笑った

鳥井
「せや、自己紹介って俺したっけ？
鳥井希…やねんけど、ゾムって呼んで」

「ゾム、さん…？」

ゾム
「そうそう、ゾム」

さぁ次、と言わんばかりの沈黙
あぁこれ私の番なのかな…

「えっと…」

ゾム
「ん？あぁ、アヤのことは分かってるからええよ」

知ってるに決まってんじゃん、と言う様に笑う彼に
じゃあなんだったんださっきの沈黙はと聞けたらどれほど良いことか

だがしかし…さて、と切り替える声に
背筋がシャンと伸びる

ゾム
「なぁ、アヤ…俺と付き合って欲しい
俺アヤのこと好きやから」

やはりこれは彼なりの誠意なのだろう
フードを脱いだ事で風に吹かれる茶髪と、その奥で真っ直ぐ此方を射抜くエメラルドグリーンの瞳

だけどそれは、あの忌々しく悍ましい夢を彷彿とさせ
鳥肌がぞわぞわと這う様に発生する

「あのそれ……いつから、なんですか…
私貴方のこと…」

ゾム
「知らんのも無理ないと思うで
けどそれは、教えたげへん

…でも俺の初恋ってことは教えたるよ」

クスクスとまるで子供がいたずらを考えて一人で笑う様に
彼は優しさを混ぜた表情で笑う

「あの…」

ゾム
「他に好きな奴でも居るんか？」

まるで次に喋ることが分かってるみたいに、彼は言葉を重ねてくる
ただ……勢いよく横に首を振った

そんな、冷たい目で見ないで欲しくて
目の前で表情が抜け落ちたみたいな彼のその様子は
やっぱり夢の様な出来事に繋がるんじゃないかと怖くなってしまって…

ゾム
「ふぅん…？」

「わ、たし…は…貴方のこと知らない…ですし…」

ゾム
「これから知っていけばええやん」

でも…貴方と一度付き合ったら…
二度とフリーには戻れない様な気がする

死ぬか、生きるかな気がする

「待って…ほしい…です」

ざわ、と風に揺すられる木の声ばかりが耳に届く
少し肌寒いその風と柔らかな陽の温かさが、妙に苦しく感じた