【d!】貴方と幸せになりたくて (ページ22)

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ゾム
「………覚えてんの…？」

「っ……？」

見上げると、影で見えにくいなかでも
ふらふらとあのエメラルドグリーンが揺れていることはよく分かって…
彼の手がキュッと拳を使ったのが見えた

ゾム
「アヤ……」

伸びてきた手に、あぁ終わりだと目を瞑るものの
優しく抱きしめてくる温度に…目を開いた

ゾム
「ごめんｯ…ごめ"ｯ…痛いこと、いっぱいしてっ"…」

その声は、悲痛で涙に濡れていた
思ってもいなかった展開に声も出せず困惑している私を置いてきぼりにして
ゾムはあの夢のように…
否、あの夢はあくまで泣きそうだっただけ

今のゾムは、泣きながら愛していると叫ぶように言う
ごめんと謝りながら

……夢であって欲しかった
そう、ぼんやりと現実逃避でもするかのように脳裏に浮かんだ言葉は
あまりにも…現実味のない話を前にしたのが理由だった

「ぞ、む…」

ゾム
「っ……嫌や…嫌や絶対離れない…ッ…」

「違くて…
あの…その……ゾムは、何か…知ってるの…？」

知ってるの、なんて聞き方じゃ違うのかもしれない
でもゾムから痛いことをされた記憶なんて、夢の中でしかなくて
それを知っているっていうことは…となってしまう

いや、意味が分からないけど
だってあれは、私の夢である筈なのだから

ゾム
「っ…あ……全部、覚えてるんやないんか…？」

ゆっくり起き上がったゾムの頬は涙で濡れていて
それを袖で拭うと、あまりにも嬉しそうにへなりと笑う

でもすぐに不安そうに瞳を揺らして
私に質問の答えを求める

「…覚えてるって…何を…？」

ゾム
「…………そっ、か…覚えてへん、のや…

…いい子にしてるからって言ったんは…なんで？
俺そんなんしろ言うてへん
別に殺すなんて言ってないのに殺さないでって言う

普段から、何かと俺に怯えた顔する時があんのも…
全部…覚えてたんやって今ので、思ったんやけど…ちゃうかったんや…
……ごめん…」

ギュッと拳を握った彼は、眉もぎゅっと寄せた
噛み締められた唇から血が出そうで触れようとすると
ゾムは私の手首を掴んで、掌に頬を寄せる

その表情は、あまりにも儚いものだった