雪解け水2滴 ページ3
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午前だけの仕事を済ませ直帰すると、抽斗から便箋を取り出した。
薄い筆圧の彼の字。
「…………高遠、遙一……。……あれ?」
改めて口に出すと、何処か聞き覚えがある名。
何時だっけ………………
ああ、そうだ。はじめと話したとき。
あの時言ってた、“地獄の傀儡師”の本名だ。
ならはじめに聞くのが手っ取り早いか……
電話帳から『はじめ』をタップしようとした瞬間。
寸前で指が止まった。
…………何で
あんな事。
普通話さないであろう、自分の宿敵の事を。
どういう思惑をもって。
彼は、何故、私に。
はじめと会ったのは、あれが最後だ。
病院以外で会ったのは最初で最後だ。
…………病院…………?
……花束だ!
アイツが持ってきた胡蝶蘭と、美雪さんが持ってきてくれたガーベラ。
花束の包みのロゴは、確か同じだった。
退院の帰り道に見たあの花屋の。
もし、二人が花屋を訪れた時間が僅かでも重なっていたと仮定すれば。
時間的には微妙……いや、そういやあそこカフェも併設されてたな。
それなら時間の幅が広がるし可能性は高い。
宿敵同士が、出会ってしまった。
花束を贈った人についてやけに聞きたそうな顔してたのも納得いく。
つまり、はじめは、知っていた。
私が彼と友人で、彼が実は犯罪者で、それを知らずに私が彼と接していることも、全て。
……今はじめに聞けば、彼は出し惜しむかもしれない。
それどころか逆に情報を引き出されるか。
私は、彼のことを何も知らないんだ。
名前すら偽りだった。
…………だったら、残る選択肢は。
電話帳をもう少し遡って画面を叩いた。
『はい、もしもし?』
「もしもし。久しぶり、
─────────美千留さん。
これから少し、時間ある?」
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camellia(プロフ) - すぃさん» ありがとうございます! SideStoryの方もよろしければお願いします! (2019年10月20日 12時) (レス) id: 24ff41186f (このIDを非表示/違反報告)
すぃ - 面白かったです! (2019年10月20日 11時) (レス) id: 045c20b509 (このIDを非表示/違反報告)
camellia(プロフ) - シリウス1315さん» ありがとうございます!! ストーリーは途中途中色んな方向に飛んでってしまってましたが、なんとか終わらせられて良かったです。次回作はもう少しお待ちくださいすみません() SideStoryもよろしくお願いします! (2019年8月22日 7時) (レス) id: 24ff41186f (このIDを非表示/違反報告)
シリウス1315 - 完結おめでとうございます!ストーリーも読み応えがあって、とても面白かったです!毎回お話更新を楽しみにしながら読ませていただきました。SideStoryおよび次回作も頑張ってください!応援してます! (2019年8月22日 2時) (レス) id: ff0fc740f2 (このIDを非表示/違反報告)
camellia(プロフ) - シェリーさん» 遅れてません、大丈夫ですよ。2回も労いのお言葉こちらこそありがとうございます!!!SideStoryに乞うご期待です!!! (2019年8月17日 22時) (レス) id: 24ff41186f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:camellia | 作成日時:2019年7月19日 17時