雪の日に拾ったのは犯罪芸術家でした。 Third

雪98片 ページ6

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　「──────では、後遺症のようなもので右腕に少し痺れるような痛みがあるかもしれませんが、もし起きたら直ぐに作業などを止めてくださいね。




　それと、激しい運動は絶対禁物です。




　お仕事は、図書館司書でしたよね？」




　「はい」





　相槌を打つ間もなく流暢に話し続ける先生。





　「重い本を持つのも避けた方が良いかと。




　体を動かすことについても、ゆっくり慣らしていった方が良いですよ」




　「分かりました、ありがとうございます」






　病院着から、久々にセーターに腕を通す。




　荷物……と言ってもスマホと本何冊かだが、それらを持って病院を出た。





　迎えに……来てくれるわきゃねえよな。




　そうだよな、うん。





　雛達も何回か見舞いには来てくれたが、今日はふっつーに平日。





　ま、皆忙しいだろーし。




　バスに乗り込んで行き先を確認する。



　スマホをいじり、覚えてるダイヤルを回した。






　「もしもし。あの、こちら先日ご依頼をお受けしたステンドグラス工房ですが……




　ええ、はいそうです。『Glanz(グランツ)』です。





　急に連絡を絶ってすみませんでした」





　一旦言葉を切って、反応を見る。






　「はい。ええ……大変申し訳ありませんでした。



　こちらで少々トラブルが起きまして。





　今回はお代はいただきませんので、……そうですか、ありがとうございます。」





　良かった。




　安堵の息をついて、目を閉じ揺れに身を任せる。






　「本当にありがとうございます。はい、是非これからもお願いします」





　事件の数日前に注文を受けてた人。




　注文以外についても二三話して司書と話してたことが功を奏した。





　事件のことも知っていてくれたらしい。




　幸い急ぎではなかったし、これからも機会があれば利用してくれるとの事だ。






　……お代はいただきません……




　弾みで言っちまったけどキツいぞ結構。





　これって慰謝料で請求できんのかな……




　考えながら、バスのステップを降りた。











　＊＊






　お店の名前『Glanz』




　意味……ドイツ語で“輝き”







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