傀儡師29人 ページ30
─
「……う……」
目が覚めた。
むっくりと起き上がり、頭を掻く。
布団で眠れたのは何日ぶりだろうか。
思ったものの、記憶を辿るときりがないので速い段階で中断した。
ベッドから下りると、勉強机の椅子の上に畳まれたものが目に入る。
長袖のワイシャツと黒いズボンを身に纏い階段を下りた。
キッチンに立っていた彼女も、セーターとジーンズに着替えている。
「おう、おはよ。良く眠れたか？」
「おかげさまで」
「だろーな。」
……まあ服が置いてあったから入ったのは当たり前なのだが。
「朝、和食で良かったか？腹減ってるだろ」
「はい」
言われて気づいた。
食事を摂らない生活が長かったせいで、空腹もあまり感じない。
昨日のホットミルクで漸く胃が正常に動きだしたぐらいの感じだ。
「座っとけ。持ってくから」
言われて昨日と同じ場所に座った。
程なくして、茶碗が持ってこられる。
もう一度切り返し、自分の碗と茶碗をもってくると、流れるような動きで箸を二膳棚から取り出し、ストンと席についた。
いただきます、と手を合わせた彼女につられて同じ動作をなぞる。
出された味噌汁を一口すすると、体が芯から温まっていく。
「……」
視線を感じて顔をあげると、至福とでも言いたげな表情で佐賀美さんがこちらを見ていた。
「……何か言いたいことでも？」
「いやー、人に飯食ってもらうのすごい久しぶりでさ。不味くない？」
「…………………好きな味です。」
「曲解して『美味い』ってとらえとく」
不味くはないと思う。
だが人が調理した料理を口にするのが久しすぎる私にとって、安易に美味しいと言うには若干の不安があった。
「ん。良かったよ」
ニコーと青い眼を細めて笑う彼女は、続けてごく軽い口調で言った。
「なあ。
お前、この家住まね？」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 62人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
camellia(プロフ) - すぃさん» 読んでくださりありがとうございます！ はーい行ってらっしゃいませ！！ (2019年10月20日 8時) (
レス) id: 3318b01060 (このIDを非表示/違反報告)
すぃ - camelliaさん» 続編行って来ます！ (2019年10月20日 8時) (レス) id: 045c20b509 (このIDを非表示/違反報告)
camellia(プロフ) - まるさん» 申し訳ありません、修正の際に誤って立ててしまっていました。ご指摘ありがとうございました。 (2019年1月2日 21時) (レス) id: 3318b01060 (このIDを非表示/違反報告)
まる - 作品を作る前にルールをしっかりご確認下さい。オリジナルフラグをちゃんと外して下さい、違反行為です。外し忘れ、とかいう軽い意識はおやめ下さい。作品を消されても仕方のない行為です。オリジナルの新着に二次創作が上がってくる事を不快に感じる人もいます (2019年1月2日 21時) (レス) id: cec6dd7646 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：camellia | 作成日時：2018年7月11日 20時
