雪の日に拾ったのは犯罪芸術家でした。

結晶14粒 ページ15

─








　その数日後、チャリティー公演の当日。



　会場は混んでた。




　いや違うわ。





　とっっってっつっもなく(訳:とてつもなく)混んでた。





　チャリティー、しかもソロの公演でこんなに人が集まるなんて思いもしなかった。





　そんなにすごい人なのかな？





　あまりの人の多さに、ホールの人達が駆り出されて整理券を配りだした。




　私は子どもなのをいいことに、大人達の長い足の隙間をスルスルと抜けて、速い段階で整理券をもらうことができた。






　呼ばれた番号の通りにホールに入る。




　前から二列目のいちばん端っこだけどホール全体で見たらど真ん中。






　イコール、結構良い席がとれたと。





　早めにきといて良かった。




　暫くして上演開始のアナウンスが入る。



















　──────そして、幕が上がった。






　正直言うと、その日はこれ以外にあまり記憶がない。










　それぐらいに衝撃的だったんだ。






　近宮玲子さん(彼女)の、マジックは。




　全身に鳥肌が立つような。






　魅せられるという、その言葉の意味を、脳髄の奥底から叩き込まれたような。






　定番の鳩を出すマジックはもちろん、オリジナリティあふれるそれらにすっかり魅了された。







　鮮やかに、流麗に、マジックをくり出す彼女の真白な手に見惚れた。












　周りの拍手喝采で我に返った私の脳に鮮烈な印象を焼きつけて、ショーは終演を迎えた。









.

結晶15粒→←結晶13粒

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す