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授業が終わって教科書のお礼を伝えようと、「佐久間く……」と呼び掛けたとほぼ同時に彼は教室を飛び出して行った。
その後もその日はなかなか佐久間を捕まえられなくて、教科書を持ったまま家に帰って来ちゃったんだよね。
「なんで持って帰って来ちゃったのかな」
お礼のメモ書きと一緒に机に置いておけば良いだけなのに。
教科書に書かれた個性的な”佐久間大介”という字を見てふ、と笑みが込み上げる。
お友達になれるかな……
結局その日は金曜日だったから、教科書を返せるのは月曜日になった。
ずっと借りた状態だし、お礼にクッキーを作ってみた。
少し早めに学校に着いて、自分の席で佐久間が来るのをソワソワと待つ。
出来れば早く来ないかな、と時計を見ていたらキキィッと隣で椅子を引く音がして顔を上げたら、後頭部にピンと寝癖を付けた佐久間が座った。
「ふぁぁっ、」
「おはよっ……」
「……ん、ん？ んぁ、おはよ〜」
机に両手を投げ出して、ふにゃあと上体を折った佐久間は眠そうで、でもその笑顔に私の緊張はゆっくりと解されていく。
「あのこれ、教科書ありがとう」
「あ、忘れてたわ。ん？あれこれ…」
机に教科書と一緒にラッピングしたクッキーを置いたら、教科書よりも真っ先にそれを掴んで持ち上げる。
「貸してくれたお礼です」と言えば、私をじっと見つめてくる。
え、それはどんな感情で見てるの？
「すっげぇ。ただ教科書貸しただけなのに、クッキーついてきた。食っていい？」
「へ、今！？」
「うん、飯抜いてきたから腹減ってんの」
リボンを解いて一つクッキーを掴み口に入れると、掌で口元を隠してモグモグしてる。
男の子なのに上品な食べ方に、意外だなぁって見ていれば大きな黒目にガッと力が入った。
「美味しぃ！ 嬉しいぃ！ ありがとう！」
「……………」
「赤塚が隣に居て、俺めっちゃ得したわ。ほんとあんがとね」
お礼を言うのは私なのに、佐久間くんは「美味い」と「ありがとう」を食べ終わるまでずっと言ってた。
ほわん、と胸が温かくなって、唇をきゅっと結んだ。
「ありがとう、佐久間くん」
きっかけなんて些細なことだった。
でもその些細なことのおかげで、私は彼を知りたいと思うようになったんだ。
そしたらどんどん”好き”の二文字が私の中で広がっていって、佐久間を見ると胸がドキドキして、彼の笑顔を見て私もずっと笑っていた＿＿＿＿＿
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ゆきんこ(プロフ) - クリボーさん» 初めてのコメントありがとうございます！嬉しいです！とことん切ないお話が読みたいって思いで作ってるので切なくなってもらえてよし！という気持ちがあります(すみません)これから暫く💗さんsideなのですが、そちらも楽しんでもらえるように頑張ります！ (2022年1月26日 13時) (
レス) id: 98af39605d (このIDを非表示/違反報告)
クリボー - 主人公ちゃんの切ない気持ちに思わず涙が出てしまいそうになりこれはコメントせずにはいられない！と思い初めてコメントさせてもらいました😆毎日更新を心待ちにしながら読み返しております☺️大変だとは思いますがこれからも頑張って下さい！！ (2022年1月25日 22時) (レス) id: bc588715c6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - ななぽんさん» コメントありがとうございます！ うわっ！叫ばせてしまいました（笑）(内心はガッツポーズしております) ありがとうございます！頑張ります😆 (2022年1月25日 21時) (レス) id: 98af39605d (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - かりんさん» コメントありがとうございます😊 ☆いっぱい押してほしいです☺️一度しかないって悲しい！でもそのお気持ちだけでも受け取っておきますね！ (2022年1月25日 21時) (レス) id: 98af39605d (このIDを非表示/違反報告)
ななぽん(プロフ) - わたなべええええええええ！！！！な展開最高です。面白すぎて毎日心待ちにしています！ (2022年1月25日 20時) (レス) @page42 id: 9658e76aab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆきんこ
| 作成日時：2021年12月8日 23時
