猫。47 ページ47
B16
平野「珍しいやん、どうしたん。
もも」
「んや、家にいたくなくて来ただけです」
平野「ふっ笑由伸と喧嘩でもしたか？」
「由伸と喧嘩はしてないですよ」
試合終わりのサロンは、そこそこ賑わいはあるけど、もものいるここだけが、何だか少し静けさがあるように感じる。
まぁ、そこがももがいるだけで楽になる所なんやけどな。
選手サロンの中で、そんなももの近くに座れば了一も来て。だけどももはももで、テーブルに突っ伏して溜息を吐く。思うのは、ただ何となくやけど、夜に電撃インスタライブを人のスマホでしてる事。
単に興味があってとか、気晴らしにとか。そんな理由もあるとは思うけど、でもももは早寝って言うイメージがあるからか、ゆったりとのんびりとした口調で、それでいてももの声って低くても柔らかいからか、夜にその声聞けば確かに寝れそうやけど。
安達「どうしたん、A。今日休みじゃなかった？」
「うんー…やすみ」
安達「由伸と一緒におらんの珍しいな」
「由伸は、どっか行ってる」
安達「何、喧嘩？」
「んーん」
伸びた白い手が、少しばかり震えてる。少し強いのか、テーブルに爪がカツカツ当る音がして、何だか入団した当初の時のももを思い返すと、何だか握らなきゃいけない衝動に駆られて、その手を握る。
いつも宮城と一緒に繋いでる手。投手でありながら、投手らしさのあまりない柔らかい手。それでも、骨張った手で何ともももらしい手だと思う。
「最近、怖い」
安達「うん」
「知らない電話番号からかかってきて、凄く怖い」
安達「寝れんのはそれ？」
「いや、普通に寝れる」
安達「そっか。それはまだ安心する」
「うん」
サラサラとももの髪を片手で撫でる了一。何かが怖いと嘆いたのは、あの頃以降無かった。
ももは、繊細な人間だと思う。誰にだって強みも弱みもあるけれど、常にマイペースなのは自分自身への暗示の様なもので。いつも通り平然と見えても、何処かで精神的な面での揺れってのはあったりする。
何処かで何かに左右されるのは、時にこう言うのがある。
「由伸は、スマホのバックアップをして貰ってる。
ケータイショップはまた今度行く」
安達「うん」
「ここ最近それがあって、頭痛い」
平野「きついな、それは」
「うん」
握っていても、やっぱり何処か震えてる手だけど、またいつかの様に、吐きダコを作らない様にはしたい。
俺だってももの手は好き。だからこそ、あの時の様な大きなタコは作って欲しくない。
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作者名：RIKU
| 作成日時：2023年8月24日 9時
