鷹 36 ページ36
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.｢っあ、あの、宵宮広報！！｣
「はいっ！」
後片付けをしていると呼ばれた名前に振り向けば、私服に着替えたハニーズの方がいた。
私服もオシャレだな。可愛い人って何でもオシャレで可愛くて羨ましく思う。かく言う私は服にはそんなに頓着無く、GUか兄弟からのお下がりや貰い物で衣食住の衣を形成している。
兄達のセンスが良くて羨ましい…。
.｢あの、宵宮広報…、その、｣
「どうかされましたか？」
.｢お願いがあるんですっ…！
わ、私を撮ってください！！｣
「え」
少し俯きだった彼女が顔を上げた時、頬を桃様にピンク色に染めて、少し恥ずかし気味な顔をしつつも可愛いと思った。
今の今迄、選手を撮る事の方が多かった。仕事が終わってからは、首から自前のカメラを提げて夜の道をゆったりと歩きながら、夜景を撮るのが日課となっていた。
でも、今の表情…凄くいいなぁ
「いいですよ」
.｢っっありがとうございます！！！｣
「夜風が涼しくなりましたね」
.｢そ、そうですね…｣
「ふふ笑チカさん、見てください」
.｢え、？｣
「ふふ笑いい表情してます」
.｢…っ笑はい、｣
街灯を頼りに、チカさんの極自然体な表情や動きをカメラに収める。街灯は時にオレンジ色だったり白だったりがあって、その光によって様々なワンシーンが撮れる。
風が遊ぶ髪の毛の揺れ、それを押さえつつも夜の秋に包まれたチカさんを撮る。笑顔は凄く素敵なのに、ふとした表情はアンニュイで。憂い溢れる表情の中にも、女性らしい色気がある。
楽しい。やっぱり、人を撮るのも景色を撮るのも、どんな顔も魅せる全て。
.｢宵宮さん、｣
「はい」
.｢私ね、あなたの事が好き｣
冷たくも暖かい風が、お互いの心を揺らした音が聞こえた。
カメラ越しに見つめていた彼女を、カメラを下ろして真っ向から見ると、まるでオレンジの街灯が全てを隠す様に彼女に色を消してしまう。だけど、それでも私にとっては、その顔は秋に見られる紅葉色の頬をしているのかもしれないと、つい想像してしまう。
私よりも小さな背丈は女の子らしくて、スポーツをしていた私よりも華奢に感じる体が揺れた。
.｢ありがとう、私を撮ってくれて。
宵宮さんが撮ってくれる写真、私大好きなの。
ありがとう、私にとって綺麗な恋をさせてくれて｣
「チカさん」
.｢ん？なぁに笑｣
「正直、同性の方からの告白は初めてで、
人から面と向かって好きと言われて、照れます」
.｢ふふ笑うん｣
「でも、ありがとうございます。
私に綺麗なチカさんを撮らせて下さって」
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作者名：RIKU
| 作成日時：2023年8月23日 21時
