猫。 [3] (ページ4)

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猫。4 ページ4

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「酒臭い…」

倒れる様に寝た所はベッドの真ん中を綺麗に陣取っているからか、いつもみたいに後ろから抱きつく由伸が橋に追いやられていて今にも落ちそうに見える。

これは俺が悪い。まだ帰ってこないだろうと思ってたし、それでいて今の今迄寝てたし。だけど、寝るならシャワーくらいは浴びて欲しい。アルコールを諸に被ってるし体内にも入れてるだろうから、流石に浴槽には浸からなくてもいいけど、シャワー…。

山本「ん"あー…あたまいたい、」

「水飲むか？」

山本「ん…のみま、す、」

あ、このコップ少し欠けてる。由伸と一緒に暮らし始めた頃に買ったマグカップ。口付ける縁の部分が少し欠けてて危なそう。他にコップってあったかな、貰い物だったり何本か買えば貰える奴で、そこそこ幾つかあった気がするけど…。

ガラス、はあいつあの状態だったら落としそうだな…。

山本「おそい、す」

「由伸のコップ、縁が欠けてて危ないと思って」

山本「Aさんのコップ、貸してください」

「ん、いいよ」

少し酔い冷ましでもなるかな。少しだけ窓でも開けるか。

そこそこ高い所にあるマンションの角部屋で、隣の部屋は最近引っ越して居なくなってから、更に静かになったと思うこの頃の夜。隣、偶にベランダでギター弾いてたの好きだったんだけどな…。

恋人でもできたんだろうか。それとも、他にいい物件を見つけたのか。少し音を外したギターの音色は、最初こそ歪であったものの、いつしかそれが心地好くなっていたから残念に思える。

山本「Aさんもう体調は平気ですか？」

「うん。寝たら大分良くなった。ごめん、心配かけて」

山本「いえ、心配は確かにしましたけど…。

俺が1番傍にいる人間なのは、忘れないで下さいね。
一緒に住んでるからとかもありますけど、何でも聞くんで」

「ビールの匂い漂わせながら言われても、説得力は無い」

山本「うわマジだ、笑」

でも、そうだな…。誰にも言えてない話なんて、これ迄の人生の中では幾つもある。だけどどれもしょうもない話だったり、時効だったりする。兄貴と仲のいい風に見られてるけど、今でも口喧嘩は偶にするし。過去には監督の帽子をフリスビーにして遊んでた事もあるし。

どれもしょうもなくて、されど笑けてしまう程には面白い。

「由伸」

山本「はーい？」

「やっぱ傍にいてくれて助かる」

山本「え、」

子どもの頃に見た、メリーさんと言う怖い話。あれだけは子どもの頃のトラウマとして、兄貴と今でも恐怖に怯える位には怖い話。

今の状況がそれ。

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