一途。46 ページ46
B18
「いい景色だった」
さっき迄試合をしていた京セラは、ほんの少しの賑やかさが幻聴の様に残っている。
そんなベンチで、Aさんは言った
最後の優勝の美は、日本一と言う栄光は、連覇と言う名のそれはない。なのに、Aさんが言うならそうなんだろうと、パ・リーグのオフィシャルサポーターを長年続けてるAさんだからこそ、納得も同感も共感もする。
今日もAさんは行ってらっしゃいと言った。最後の最後は、皆一人一人にそう言っていた。
山本「Aさんが言うなら、そうでしたね」
「私が言わなくても山本君もそう思うでしょ？笑」
山本「まぁ、はい笑」
「アメリカ、頑張ってね」
山本「はい」
「あ、大谷くんに宜しくね」
山本「同じチームになれるかは分からないっすけど笑」
「あと、ダルさんや千賀さんや、あと鈴木さんなんかも」
山本「取り敢えず、MLBにいる日本人選手に
宜しく言っておきますね笑」
「うん、頼んだ笑」
皆この距離感が好きだと言うけど、確かにAさんのこの距離感は好き。近過ぎず、かと言って遠すぎず。絶妙なラインを超えず、Aさんだから、Aしか聞けなくて話せない事もあるまさにこれ。
ポスティングシステムを利用して、MLBでの活躍を目指す人なんて沢山いる。そして、それに挫折する人だっている。日本では味合う事が出来ない事。世界の空気が違う事。
ここ迄来ると、きっと楽しいだけじゃ出来ない世界何だと思う
「ダルさんが言ってたんだけどさ」
山本「はい」
「あぁ、これはきっと山本君だけとは限らない話だけどね
世界の空気を美味しくするには、
楽しくするのが1番いいんだって」
山本「え、？笑」
「料理で例えたら、空気は味のないスープで
人間はその調味料で。
塩を入れすぎたらしょっぱくなって、
砂糖を入れると甘くなる。
どっちが飲みたい？」
山本「どっちも飲みたくないっすね…」
「でしょ？だけど、人はそれぞれ個性があって
性格によってその人が材料か調味料かで味が変わる。
だから、世界の空気を美味しくするには、
自分が楽しく料理をして味合うのが
1番の調味料なんだって」
山本「…なるほど」
「野球と言う名の料理、山本君はどう料理をして
お客さんに振る舞うのか楽しみだな笑」
ダルさんの受け売りらしいその言葉は、Aさんが言うからストンと落ちてくる。多分、世界で活躍するダルさんから言われても、それが世界で通用してるから真似するだけになるかもしれない。
やっぱりAさんのこの距離感は、凄く好き
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作者名：RIKU
| 作成日時：2023年8月16日 19時
