一途。29 ページ29
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《 馳せてた思いはとうに、 》
" ごめんね、私意地悪する人って人として嫌いなの "と、とうの昔に言われた事を思い出す。
その人は、俺より1つ年上で仕事が好きで俺に唯一話す事が出来る人とさえ言われていたけど、色んな人と話して笑って野球の魅力を伝えつつ、その厳しさの部分も発信してくれるような人。
自分の実の姉並に存在や性格を慕って、何かとイタズラもしてたけど、その殆どは「何やってんだこいつ」みたいな表情で見られて、笑顔にはならなかった。その時だけ。
気を引かせたかったが故に、少し行き過ぎたと自分でも思ったら案の定だった。
だけど、時に構ってもくれて。耳触りの良い鼻歌に時々「変な歌」なんて言って笑ったけど、AちゃんもAちゃんで「可愛いでしょ」って的外れな回答を言って笑ってた事もある。
そこにチームメイトが「Aの事好きだろ」って言われた事もあったけど、俺が見てたAちゃんは何方かと言えばなんでも言える人で。
確かに好きであったとしても、Aちゃんに対するのは敬愛だ。何事にも姿勢を正して打ち込む事やハッキリと言える事。優しさもあって、その分ちゃんと叱ってくれる。
そんな所が。
水原「どうした?」
大谷「んー…、今の状態見たら
Aちゃん何て言うかなって」
水原「そのAちゃんがさ、
大好きな野球で出来た怪我なんだから
ちゃんと治してから、マウンドに立ちなさいって言ってたよ」
大谷「何、俺の知らない所で連絡取ってんの?
えりかさんに言ってあげようか?」
水原「えりかから来た連絡だから。
それに俺連絡先持ってないし」
なーんだ。えりかさんに来てるんだったら、俺にも来てるかな。でもついこの間も電話したばかりで、そう何度も来てないかな。
怪我なんて、そう簡単に治る訳でも無ければ、そんな直ぐにマウンドにもバッターボックスにも立てる訳じゃない。それでもAちゃんって、俺だって成長してるし性格も変わってるかもしれないのに、自分以上に自分の事を分かってる。
何年経っても、そう会えなくて話す事にも距離があるのに…。
大谷「…もしもし、Aちゃん」
-- はーい…
大谷「ごめん、寝てる所。
どうしても不安だったから声聞きたかった」
-- ふふ笑寝落ちしてたから丁度いい目覚ましだったよ笑
どうしたの、何が不安?
大谷「俺さ、野球出来なくなるかな、」
-- そうだなぁ…。じゃあ、手術をして退院したら、
気晴らしに私の結婚式でも来て
大谷「え、え…?」
-- 待ってるね
大谷「あ、う、あ、待って!おめでとう!」
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作者名:RIKU | 作成日時:2023年8月16日 19時