一途。21 ページ21
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まるで水中の様な包容感のある腕の中で、少しの微睡みがある冴えない目に、近くにあるその顔が映る。
形のいい眉に閉ざされた目、距離が近いからこそ伝わる息遣い。寝ているからなのか、包んでくれてるその腕の力加減は優しくて、それでも鍛えてる分の重みは感じる。
次第に冴えていく脳や目は、彼をはっきりと映し出しては昨日の事を鮮明に思い出させられて1人恥ずかしくなって、彼から顔を背けてしまう。
だけどその分、彼が力を少し込めたのが伝わる。起こしちゃったかな？起きた？顔を背けた分、顔が見れないから彼が起きてしまったのかとヒヤヒヤする。
板東「おはようございます、」
「おはよ、ございます…」
板東「ふっ、耳真っ赤笑」
「ん、ちょ…擽ったい…っ」
起こしてしまったか。けど、未だに解いてはいないその腕の中の体温と、頭を撫でる手つきが眠気を誘う。
「ぅ、やっ…」
板東「Aさん反応が一々可愛過ぎるから
何か悪戯したくなる笑」
「イタズラの範囲外でしょ、それ」
板東「じゃあ何処迄が範囲内？笑」
「板東君がやってる事は全て範囲外」
板東「それは無いでしょ笑」
朝がこんなにも甘ったるく感じる事はなかった。さっき迄寝てたのに、起きるとわざと耳元でリップ音を聞くとは思ってもみなかったし、耳が擽ったい。人が顔を見れない事をいい事に、やっていい事と悪い事があると思う。
板東「でもAさんだって同罪ですよ」
「え？」
板東「Aさんの息と髪の毛が当たって擽ったい」
「それは板東君が腕を解かないから、」
板東「あと、耳真っ赤にしてるのが丸見えとか」
「板東君がそこでわざとリップ音出すからでしょ」
板東「それにAさんの抱き心地が良すぎる」
「それは…」
板東「離したくない」
昨日は散々だったのに…。こっちの気も知らないで、何て事は言えないけど、それでもギュッと抱きしめるこの腕の中から、埋めてた顔を上げてみれば、真っ先にその目と合ってしまった。心臓がドクリ少し嫌な音を立ったのが分かる。
後ろに引こうとした体は、思ってた方と逆に引かれては、その腕から抜け出す事が不可で、板東君の思い通りに叶った様な体勢へとなる。
怖くは無い、だけどその先にあるものにハマって、落ちてしまいそうになるのは、少しだけ怖い。
「っ、ん…」
板東「Aさん」
「ん？」
板東「Aさんが1番タチ悪いですからね」
#同類であり同罪
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作者名：RIKU
| 作成日時：2023年8月16日 19時
