一途。18 ページ18
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福岡についてかれこれ数時間。迎えに来てくれた板東君との車内は、少し明るめの音楽が流れてはいるものの、まるで涼し気にしてくれてる冷房の様に、少しだけ不穏な雰囲気が漂う板東君。
果たして何があったのやら…。
優しさと悪戯心が伝わる山本君からパテレのTikTok動画が送られてきたけど、最初の注意書き文句の様に焦慮感あっても顔がいいと男前だなって思った。
「板東君」
板東「はい」
「…あ、北海道でねお土産買ったの」
板東「ありがとうございます」
「うん…、皆で食べて」
人とよく関わる仕事だから何となく禁止ワードがわかった。北海道だ。この際日本ハムファイターズと言うワードを出せば板東君がどうなるのかは少し気になるけど、これ以上彼の癪に触れて更なる不快感を思わせるのは嫌だからやめておこう。
折角の貴重な練習時間に、こうやって迎えに来て貰ってるんだもん。これ以上彼への刺激物は控えておかなきゃ。
「あれ、板東君？ホテル過ぎたんだけど、」
板東「俺も渡したいのあるので一旦俺の家に向かってます」
「え、…なに？それ」
板東「それは秘密です」
今の今迄こう言う事無かったから、ちょっと焦る。東京にいても福岡にいても、お互いの家や止まってるホテルに来る事はないし、同じホテルであっても部屋の中迄入る事はない。
いやいや、板東君の家って言ったてマンションだからエントランスで待っておこう。そこで待ってても変に撮られる事はないし、思われる事だってないだろう。
私達は付き合っていない、あくまで友人の間柄だと思ってる。好きだとお互い理解していても、少なくともその友人の間柄の種類には含まれる事はないし、そもそもしてすらもない。
なんて、自分に自分で言い聞かせても意味を生してるか…
板東「着きました」
「うん」
｢｢ … ｣｣
板東「降りてください」
「ホテル戻るなら、ここで待ってちゃダメ？」
板東「だめ」
「マジか…」
板東「行きたくない理由とか出来ました？」
「え、や…お互いの家ってそもそも上がった事ないなって」
｢｢ … ｣｣
「ここでは話せない？」
板東「出来るだけ」
「私はどうしたらいい？」
板東「その聞き方はずるいですよ…」
「うん」
板東「でも、話は聞いて欲しいです」
今迄の距離感が、何だかグッと近い様で何だか少し遠くある気がする。だけど、人の家や部屋って自分の絶対領域の中に足を踏み入れてしまうのって、何だか緊張する。
友達は友達でも、ね。
(いい家に住んでるね)
(Aさんには及びませんよ)
(いやいや、それはない)
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作者名：RIKU
| 作成日時：2023年8月16日 19時
