コード・ブルー -Best Partner 2- (ページ6)

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No.53 ページ6

(冴島)

そう、最初はそんな風にしか思ってなかった。
フェローの中でも腕が良くて、正直何でフェローとしてうちに来たのだろうって思ってたぐらい。

『冴島さん、この患者さんの事なんだけど…』

『その患者さんでしたら、確か三井先生が…』

だからかもしれない、フェローの中でも私が唯一話す中だったA。
仕事会話だけど、当時抱いていた白石先生達とは違う気持ちで話せてた。
聡からなにも聞いていなかったから良く話すところを見て、仲良くでもなったのかと思っていた。
けど、聡が息を引き取るとき。

『……はるか、Aを支えて…欲しい…』

その言葉を最後に、聡はそのまま息を引き取った。
私は田沢先生に言葉の意味を聞こうと探していたら、ヘリポートで姿を見つけて向かった。

『…田沢先生』

『冴島さん後悔はない？』

『はい、田沢先生のお陰です』

『そんな事ないよ、冴島さんは田沢さんの大切な人。それなら最後の瞬間まで傍にいたいと思うのが普通だから』

ヘリを見る田沢先生に、私は違和感を感じて探るように目を向ける。
田沢先生はそんな私に何かを感じたのか、苦笑しながら口を開いた。

『田沢さんに何を言われたの？』

『田沢先生を支えて欲しいと言われました。…その』

『…そっか、もう隠せないね。私の本名は桜井A、田沢は母の苗字なの』

予想外の言葉に私は何も言えない。
どうして、わざわざ本名ではなく偽名でいるのかが不思議に思う。
そう思ったのを察したのか、田沢先生は近くの柵に寄りかかって何かを思い出すように口にした。

『ちょっと父と色々あって、お母さんが私の戸籍を変えたの。田沢聡さんは私の従兄弟なんだ』

『…従兄弟…ですか』

『うん、高校2年にお母さんが戸籍を変えて父と疎遠になってからお世話になってた。冴島さんの話はよく聞いてたよ、「しっかり者で努力家、頑張り屋さんだからAのいい姉になると思う」って』

その言葉を聞いて、当時の私では柄でもないのにAを抱きしめたのを覚えてる。
Aは驚いて、『冴島さん！？』と声を上げてたけどすぐに背中に腕を回してくれたよね。

「確か、あの時初めてAに怒ったかも…」

「嘘、あれが初めて…」

「うん、Aは優秀なフェローだったから。自分を犠牲にし過ぎだって怒ったの」

そう私が言えば、白石先生はうんうんと頷いたのを見て私は思った事を口にした。

「白石先生とAって、昔どんな感じだったの？」