コード・ブルー -Best Partner 2- (ページ11)

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No.58 ページ11

(桜井)

私は思い出すように、目を細めながら記憶を辿って口を動かした。

『私、お母さんがバスケの選手だったの。その影響でバスケやってたけど、高校2年の時に病気で亡くなって。お父さんは私がバスケをやるのを嫌がってたから辞めさせようとしてた。
多分、お母さんに私は生き写しのように似てるから思い出しちゃうからだと思うんだけどね。』

そう、私はお母さんと本当に生き写しなぐらいに似てるらしい。
私が話してると、恵や藍沢、美帆ちゃんは雰囲気で心配になったのかICUに集まってくる。

『高校2年の時、お父さんから逃げる条件で医学部に入る事だけ決まってお母さん方の親戚の家に逃げた。大学に入っても、もちろんバスケは続けたよ？でも、大学5年になるって時にお父さんが親戚の家に来たの』

──この出来損ないが！ボールを追いかける事にしか頭を使えんのか！
医者にならないなら、この場で消えろ！お前が死んだって誰も損なんてしない、それどころか得だらけだ！

「……何…それ」

『だから私はバスケを辞めるしかなかった、親戚の人達は私の事を守ってくれたけど迷惑かけたくなかったからね。それでバスケを辞めたら、私には何も無かった。別に入りたくて医学部に入った訳でも無い、残ったのは後悔と復讐心だけ』

「……それじゃあ」

『お父さんとはそれっきり疎遠状態。お母さんが最後に頑張って私とお父さんの縁を切ったのに、あの男はそれを役所まで行って紙を破り捨てた。だから、奏ちゃんの質問に答えるなら私には何も残ってないの。』

奏ちゃんのためになるかは分からない。
ただ、私は奏ちゃんの状況は羨ましい。私の場合は病気じゃないから羨ましいなんて言っちゃいけないかもしれないけど。

『奏ちゃんと一緒。バスケを捨てるぐらいならこんな人生捨ててやるって何度も思った。実際、自分で終わらせようとした事あるよ』

「……うそ」

『……でも終わらせなかった。何もせずに、あの男の思惑通りに動くだけなんて嫌だなって思って』

「……お兄ちゃんは知ってたの？」

『うん、そんな状況でどうして私が医者をやるって選択したのかも知ってるよ』

「…どうして？」

『あの男は私の全てを奪った、だから私はあの男を殺すために医者をやってる』

その言葉に誰もが黙った。
恵は手に持ってたカルテを落としたし、はるちゃんと美帆ちゃんは目を見開いてる。

『あくまで桜井慎太郎という医者生命を殺すため、人としての人生は奪わないよ？』