No.07 ページ8
(桜井)
般若となったはるちゃんから何とか逃げ出し、カルテを手に持って一般病棟に行く途中。設置されていた七夕で用いられる笹に目が行く。
小児科で入院している子達が何人も集まって笹に短冊をかけながら笑顔で話していた。
そういえば、七夕の時期だとふと思いながら目の前にある小さな幸せに私はクスッと微笑んだ。
「ねぇねぇ！何書いたー？」
「ボクは、早くお家に帰れますよーに！って！」
「わたしはお母さんが元気になりますよーにって書いたよ！」
小さい子達の楽しそうな声を聞いて、更に私は口元が緩む。
自分にもあんな時間があったなと思考に浸っていれば、呼ばれている声にも気づかず肩を叩かれてやっと気づいた。
『うわぁ！？』
「えぇ！？な、なんかごめん！」
『あ、いや、大丈夫大丈夫。恵だったんだ、びっくりした』
「もう、何度も呼んだよ？」
恵がちょっとだけ怒ってしまった。ありゃ、ボーッとしてたのがバレたかな。これはまた心配かけてしまいそう。
『ごめんごめん。ちょっとあれみててさ』
私がそう言いながら視線を向ければ、恵も私から子供達の方に視線を向ける。
今も子供達は自分の将来の夢や可愛らしい願い事、家族や友達についての願いを短冊に書いて賑わってる。
「楽しそう、私も小さい頃は書いたな〜」
『恵はいっつも"お父さんみたいなお医者さんになる！"って書いてたっけ？』
「そうね、Aは……ごめん」
突然、凄く笑顔だった恵の顔から急に悲しそうな顔に変わる。
私は気にしなくてもいいのにと思いながら笑って言葉を返す。
『いいって、もう大丈夫だから！』
「……うん」
『ほら笑って！白石先生は笑顔以外は似合いませんよー？』
私はカルテを脇に挟んで両手で恵の両頬を引っ張る。
そんな事をすれば勿論、恵も私に仕返しをしてくるわけで。
「いひゃい、いひゃいって！A〜！」
『ちょ、そんにゃ強くやってひゃい！』
お互いにお互いの両頬を引っ張っている救命の医者、なんて傍からみれば異様でしかない。
でもそれを当の本人達である私達は知るよしもなく、隣を通った美帆ちゃんから冷ややかな目で見られる。
「アンタ達……何やってんの？」
『「…………。」』
サッとお互いの頬から手を離し、何も無かったかのように私達はカルテを持ち直す。
そう、私にもあんな時間はあった。
でも他の人より凄く短かった、私の日常という幸せは光の速さよりも早く終わったんだ。
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Yuri - 更新、楽しみにしています！ (2018年8月2日 21時) (
レス) id: d785c31dd6 (このIDを非表示/違反報告)
柚希拓海(プロフ) - ☆ゆゆまる☆さん» ありがとうございます。すぐに確認し訂正させて頂きます。 (2018年5月27日 18時) (レス) id: 0d726a2806 (このIDを非表示/違反報告)
柚希拓海(プロフ) - みかさん» 返信遅くなりすみません。ありがとうございます、すぐに訂正します。 (2018年4月14日 18時) (レス) id: 0d726a2806 (このIDを非表示/違反報告)
みか - No.１８で「行ってたの」が「言ってたの」になってますよ (2018年4月2日 13時) (携帯から) (レス) id: cb44cdb910 (このIDを非表示/違反報告)
柚希拓海(プロフ) - 真衣さん» 感想ありがとうございます！これからも頑張ります！ (2018年3月30日 14時) (レス) id: 0d726a2806 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柚希拓海 | 作成日時：2018年3月20日 21時
