No.43 ページ44
(桜井)
カンファレンスが終わり、私は医局室にあるヘリ担当が表記されてるホワイトボードを見る。
今日の担当は白石先生と冴島さん、そしてフェローの灰谷先生。
「桜井？どうかしたのか？」
『あ、橘先生。いえ、特に理由は……』
「そんな風には見えないぞ〜？言ってみろ」
『……今日のヘリ担、白石先生じゃなくて私に変更出来ませんか？』
「ヘリ担を？別に構わないが何かあるのか？」
まさか、占いで"大切なものを失くしそう"と出たから念の為だなんて言えない。
私は悟られぬように表面上の理由を口にした。
『いえ、ただ私こっち来てからまだヘリ担やってなかったので。それに、白石先生と藤川先生だけで今まで回してましたし少しでも負担を減らしてあげたいなって』
「そうだな、アイツら2人はかなり頑張ってくれてたからな……。じゃあ、今日のヘリ担は桜井に頼む、白石には俺から伝えておくから」
『はい、ありがとうございます』
ホワイトボードに貼られてる白石先生の写真付きマグネットを外し、自分のものと場所を入れ替える。
そう言えばカンファレンスの時、灰谷先生が凄く青白い顔をしてたけど大丈夫かな。
もし横峯先生と同じようになりそうだったときように飴持っとこ。
私は医局室を出て担当してる患者さんの様子を見に行こうとした時、どこかからピアノの音がした。
誰かがピアノでも弾いてるのだろう、でもかなり上手い。
音に無駄がなくて綺麗に奏でてる。
『…誰が弾いてるんだろ』
その音につられるように歩を進めると、音の発生源は小児科で設置されてる一室。
中を覗くと見慣れた後ろ姿が見え、私は思わずびくっと肩を揺らす。
『……奏…ちゃん』
「……え、あ、A先生…？」
ドアを開けていたし、つい声を出してしまったから聞こえてしまったらしい。
どうしよう、凄く気まずい。
「…先生、ここに来てたんだね」
『…うん』
「その服ってことは救命？」
『そうだよ』
「…そっか。あのね、A先生」
『うん？』
私はドアから手を離し、近くにあった椅子に座り込む。
奏ちゃんはピアノを指でボタン押すように弾きながら口を開いた。
「私、頭に腫瘍があるんだって」
『……ぇ』
「ピアノが弾けなくなるかもしれないって言われたの、でも私にとって命よりピアノの方が大事なんだ」
彼女に突きつけられてるのは、命とピアノが架けられた天秤。
誰もが命と即答するこの問題に私は彼女に何も言えなかった。
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Yuri - 更新、楽しみにしています！ (2018年8月2日 21時) (
レス) id: d785c31dd6 (このIDを非表示/違反報告)
柚希拓海(プロフ) - ☆ゆゆまる☆さん» ありがとうございます。すぐに確認し訂正させて頂きます。 (2018年5月27日 18時) (レス) id: 0d726a2806 (このIDを非表示/違反報告)
柚希拓海(プロフ) - みかさん» 返信遅くなりすみません。ありがとうございます、すぐに訂正します。 (2018年4月14日 18時) (レス) id: 0d726a2806 (このIDを非表示/違反報告)
みか - No.１８で「行ってたの」が「言ってたの」になってますよ (2018年4月2日 13時) (携帯から) (レス) id: cb44cdb910 (このIDを非表示/違反報告)
柚希拓海(プロフ) - 真衣さん» 感想ありがとうございます！これからも頑張ります！ (2018年3月30日 14時) (レス) id: 0d726a2806 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柚希拓海 | 作成日時：2018年3月20日 21時
