No.42 ページ43
(桜井)
緋山先生と名取先生と別れて前を歩く冴島さんを止めようと、腕を掴む。
びくっとした冴島さんは険しい表情で振り返った。
「誰ですかって桜井先生！？」
『ごめんね、突然掴んじゃって。今時間ある？』
「カンファレンスまでなら……」
『じゃあ、それまででいいから来て！』
私は冴島さんの腕を引っ張って、普段飲み物を買う自販機前に設置されてるベンチに座る。
どうして連れてこられたのか分からない冴島さんは、きょとんっとして私の顔を見ている。
「どうしたの？」
『それはこっちの台詞だよ…』
「え？」
『だって、昨日と雰囲気違う。思い詰めてるっていうか、悩んでるっていうか。あんまりいい状態じゃ無さそうだったから』
「…A」
『前から言ってるでしょ？私は嘘や演技は気付く方だって』
私がそう優しく笑っていうと、冴島さんは「…そうね」と困ったように笑った。
言いづらい内容なら聞かないけれど、無理して溜め込んだらダメ。
私はなるべくその気持ちが伝わるように背中をゆっくり摩ると、コツんっと肩に冴島さんが頭を預けてきた。
『はるちゃん、何があったの？』
「…朝、出勤する途中で相談しようかと思った時一男に「結婚しよう」って言われたの」
『うん、っていい事じゃん！？』
「…そうなんだけど、「考えたいとか、不安に思ってたのは俺がはっきりしなかったからだろ。ちゃんとしよ」って言われて。ちゃんとって何？どうして今なの、私が妊娠してなかったら結婚しないの？って思ったの」
あー、なるほどね……
藤川は藤川なりに考えたんだろうけど、タイミングが悪かったんだ。
確かにそれだけを聞いたら、まるで冴島さんが妊娠しなければ結婚しないって言われてるように聞こえちゃうね。
私は優しく冴島さんの背中を摩る。
初めての赤ちゃんだし1度大切な人を失ってるんだ。妊婦さんは不安が多いけど、それの倍以上に不安なんだろうな。
『そっか、それで暗かったんだね』
「…うん、でも仕事に支障は出さないから」
『違う違う！そういう事じゃないよ、誰だって不安になる。大丈夫、私も支えるから』
「ありがとう、A」
『どういたしまして！さて、そろそろカンファレンスだよね？』
「えぇ」
私達はベンチから立ち上がり、カンファレンスが行われる部屋へと向かいながら私は冴島さんの背中を見る。
あの背中にどれだけのものが乗ってるんだろう。
きっと、私では測りきれないほど大きいものだ。
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Yuri - 更新、楽しみにしています！ (2018年8月2日 21時) (
レス) id: d785c31dd6 (このIDを非表示/違反報告)
柚希拓海(プロフ) - ☆ゆゆまる☆さん» ありがとうございます。すぐに確認し訂正させて頂きます。 (2018年5月27日 18時) (レス) id: 0d726a2806 (このIDを非表示/違反報告)
柚希拓海(プロフ) - みかさん» 返信遅くなりすみません。ありがとうございます、すぐに訂正します。 (2018年4月14日 18時) (レス) id: 0d726a2806 (このIDを非表示/違反報告)
みか - No.１８で「行ってたの」が「言ってたの」になってますよ (2018年4月2日 13時) (携帯から) (レス) id: cb44cdb910 (このIDを非表示/違反報告)
柚希拓海(プロフ) - 真衣さん» 感想ありがとうございます！これからも頑張ります！ (2018年3月30日 14時) (レス) id: 0d726a2806 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柚希拓海 | 作成日時：2018年3月20日 21時
