No.18 ページ19
(桜井)
自動販売機の前に立ち、ココアのボタンを押して買う。
普段はココアはあまり飲まないけど今は何故か飲みたい気分になってた。
名取先生に少し悪い事しちゃったな、強く遠ざけるような言い方しちゃってたら申し訳ないな。
『……はぁ』
「せーんせっ！」
『あれ、萌夏ちゃん。どうしたの、もう夜遅いよ？』
私が担当してる一人である五十嵐萌夏ちゃん。
14歳の彼女は身体が弱くて、私がフェローの時から入院し続けている。
私にとっては妹的存在。
「ちょっとトイレ行ってたの、それに遅いって言ってもまだ６時前だよー？」
『んー、でもベッドにいないと看護師さんに心配されちゃうから先生と戻ろっか』
「えー、あ！じゃあ一緒にあれだけ書いて！」
『ん？書く？』
ついてきて、とでも言いたげに私の腕を掴んで歩き始める。
一瞬走り出しそうになったけど何とか走っちゃダメと言われてる事を思い出してくれたのか、ちゃんと歩いてくれたのは偉いと思った。
引っ張られながら向かったのは昼間に見た七夕の笹。
緑一色だった笹が今では色鮮やかな短冊で彩られて、綺麗に七夕を象徴している。
私を近くのテーブルと一緒に設置されてる椅子に座らせ、萌夏ちゃんは短冊2枚とペン2本を手に私の横に座った。
「一緒に書こ！先生！」
『……短冊に？』
「そ！もしかして、中学2年にもなって短冊に願い事を書くなんてって思ってる？」
『ふふ、思ってないよ。んー、じゃあこれ書いたらベッドに戻るって約束ね？』
「もっちろん！」
萌夏ちゃんから短冊とペンを受け取り、願い事を考える。
何十年ぶりだろう、願いを頼むなんて。
目の前にあるのは偶然にも最後に書いた時と同じ色の赤い短冊。
あの時の願いは結局叶わなかった。私は1度も叶ったことなんてない。
「先生？」
『あ、もう書き終わった？』
「うん！先生には特別に見せてあげるよ！」
そう言って自慢げに見せてくれたのは水色の短冊に書かれた綺麗な字。
《A先生みたいなフライトドクターになりたい！ 萌夏》
『っ！？』
「驚いてるね、ずっとこれが私の夢なの」
こんな私を見て将来の夢にしてくれる子がいるなんて思いもしなかった。
ただ、誰にも迷惑をかけないように邪魔をしないように生きていただけなのに。
「だからここで待ってて！」
『うん、楽しみに待ってるね』
それから私は短冊にペンを走らせ、二つの短冊を萌夏ちゃんと一緒に笹に括りつけて病室まで送った。
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Yuri - 更新、楽しみにしています！ (2018年8月2日 21時) (
レス) id: d785c31dd6 (このIDを非表示/違反報告)
柚希拓海(プロフ) - ☆ゆゆまる☆さん» ありがとうございます。すぐに確認し訂正させて頂きます。 (2018年5月27日 18時) (レス) id: 0d726a2806 (このIDを非表示/違反報告)
柚希拓海(プロフ) - みかさん» 返信遅くなりすみません。ありがとうございます、すぐに訂正します。 (2018年4月14日 18時) (レス) id: 0d726a2806 (このIDを非表示/違反報告)
みか - No.１８で「行ってたの」が「言ってたの」になってますよ (2018年4月2日 13時) (携帯から) (レス) id: cb44cdb910 (このIDを非表示/違反報告)
柚希拓海(プロフ) - 真衣さん» 感想ありがとうございます！これからも頑張ります！ (2018年3月30日 14時) (レス) id: 0d726a2806 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柚希拓海 | 作成日時：2018年3月20日 21時
