キミの存在価値。1 (ページ49)

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5人になった日。8 ページ49

智side

雅紀がなんとか呼んだ救急車で父さんと母さんは運ばれていった。

もう、遅いのだけれど。

もう、冷たいんだけど。

運転免許のない俺と、運転は出来るがなんとか意識を保っている雅紀を見た警察の配慮でタクシーを呼んでもらい、意識のない潤は雅紀が付き添って、後から来た救急車で運ばれていった。

それからは怒涛の日々だった。

和は泣いて泣いて体力を使い果たし、ぱたりと死んだように眠った。次に起きた時には、あかに染まった両親のことは覚えていたが、麻歌のことは存在自体を忘れていた。

潤は暫く眠ったままだったが、和と同じく、目を覚ましたら麻歌を忘れていた。

翔は血を見て戻すようになってしまった。でも麻歌のことは覚えていた。

病院では入院してようが警察からの取り調べ。

家に荷物を取りに帰れば、カメラと取材班の集団。

近所の同情したような、面白がっているような目。

こんなの、ドラマの中の世界だけだと思っていた。

両親の死を悲しむ暇さえもなかった。

餓鬼の俺らにこれからのことを決められるような判断力があるはずもなく、あの日から助けてくれていた親戚の家に逃げ、あの家を売った。

麻歌は見つからなかった。

勿論見つかってほしい。

勿論生きていてほしい。

もう一度、あーちゃんに会いたい。

でも、もし見つかった時。

もしあかに染まっていた時。

きっと和と潤は思い出す。

そしたらまた2人は苦しんでしまう。

親戚の家にはいつまでも居られないし、

俺が働かなきゃお金は入ってこないし、

もう、いっぱいいっぱいだった。

雅「智にぃ、何であーちゃんの捜索願取り消したの...？」

智「...もう、」

雅「何で諦めんの！！！？」

智「っ！

見つかった所で死んでたら？和も潤もまた苦しむことになる。パニックとはずっと向き合わなきゃいけないんだよ。いつまでも叔父さん叔母さんに頼るわけにはいかないの。早く5人で暮らせるようにならなきゃいけないの。」

雅「何で死んだって決めつけんだよ！！！」

翔「生きててもあと20年、あーちゃんが大学卒業するまでいくらかかると思ってんの？俺らにそんな経済力もねぇだろ！！！！」

雅「医者になれば、！」

翔「血見て吐くような奴が手術できるかよ！！！！」

みんな限界だった。

だから、簡単に、崩れていった。