キミの存在価値。1 (ページ42)

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5人になった日。1 ページ42

智side

土曜日の午後。

いつもは診療日だけど休みにしてもらって、リビングに弟たちを集めた。

5人がこうやって集まるなんて珍しいから、どこか和と潤はそわそわしている。

和「智にぃ、何の話...？」

智「...昔の話。少し長くなるよ。」

ぴくんと2人の肩が揺れる。

潤「お、おれが、悪いから...っやだ、やめて...っ」

翔「潤！」

和「ごめ、なさい、ちが、俺が悪いのっ、智にぃ、潤くんを怒、ないで、っ」

雅「大丈夫、大丈夫。誰も怒ってないよ。」

"昔の話"と出しただけで呼吸が怪しくなって、がくがくと震え出す2人。

智「2人とも部屋で少し休んでおいで。」

リビングに1人、俺だけが残った。

...やっぱり、話すべきではないのかな。

いや、でも。

話しても話さなくても、きっと一度は苦しくなるんだよな。

あかに染まったのは、誰も悪くないと

真実が明らかになっても。

奪われてしまったのは俺らがあの時、ってきっとまた自分を責めるんだ。

雅「2人とも落ち着いたよ。少し2人で考えたいって。」

智「そっか。ありがとね。」

翔「...智にぃ。」

智「...やっぱり、話すのは辞めた方が、」

翔「逃げたいよ、俺だって。誰かが苦しむのは出来る限り見たくない。

でも、もし第三者から"あの日"のことを知らされた時は、」

雅「そんな、！」

翔「もう15年前のことだからって、絶対大丈夫な訳ではないでしょ？

あの時は周りが守ってくれたから情報は何も入らなかったけど。もう、俺らを守れるのは俺ら自身でしかないんだよ。

第三者から知らされた方が傷つくと思う。

そしたら今度こそ...

俺、5人でやってける自信ない。」

雅「翔にぃ...。」

みんな、怖いんだ。

真実を知る俺と翔と雅紀は、

あの時のように、ばらばらになってしまうことが。

真実を知らない和と潤は、

ぼんやりとしか無い記憶が鮮明になってしまうことが。

それぞれ理由は違うけど傷つくことを恐れている。

結局、どの道を選んでも傷ついてしまうから尚更だ。

智「...わかった。話そう。」

俺らは怖がりだ。

怖がりだから、一番傷つかない道を選ぶ。

傷ついても、5人で一緒に居たいから。