キミの存在価値。1 (ページ41)

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覚悟ページ41

智side

この前、翔から連絡があった。

"5人で戻ろう"と。

覚悟はしていた。

いつか思い出してしまうことを。

いつか向き合わなきゃいけないことを。

ただ、愛する弟たちの苦しむ顔を見たくなくて。

俺自身が傷つくのが怖くて。

5人がバラバラになってしまうのが怖くて。

ずっと隠していた。

上手くいけば、ずっと隠しておこうとさえ思っていた。

ただ、物事はそう上手くはいかないもんだね。

雅「智にぃ、俺もう無理だよ。

これ以上隠せる気がしない。」

智「...。」

翔「もう全部話そう、智にぃ。

和も潤も思い出せなくて辛いんだよ。」

智「...思い出したところで、楽にはならないよ。

むしろ、これからもっと辛くなると思う。フラッシュバックも過呼吸も酷くなる。記憶障害も起こすかもしれない。

翔も雅紀も、症状が重くなるかもしれない。

俺がもっと迷惑かけるかもしれない。

...俺らは強くないよ。それでもいいね？」

そうだ。精神科医だからって強い訳ではない。

むしろ弱い。

すごくすごく、弱いんだ、俺らは。

翔雅「...うん。」

智「わかった。もう戻れないよ？」

翔「引き返すつもりはないよ。」

雅「覚悟は出来てるつもり。」

俺らは強くない。

強くないけど、強くなろうとしてるんだ。

翔も、雅紀も、和も、潤も。

弟たちの頑張りを摘み取っちゃいけないね。

智「わかった。じゃあ明日話そう。

今日は何も考えないで寝なさい。今から辛くなる必要はないから。」

翔「わかった。おやすみ。」

雅「おやすみ、智にぃ。」

智「うん、おやすみ。」

部屋に戻り、クローゼットから古いアルバムを取り出した。

"みんな"、笑っている。

"8人"が、楽しそうに笑っている。

"だいじょーぶ？"と

舌足らずな声が聞こえた気がした。

智「大丈夫、だよ。」

戻ろう、"15年前"に。

戻ろう、"5人になった日"に。