キミの存在価値。1 (ページ40)

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パンドラの箱2 ページ40

翔side

潤「翔にぃ、ちょっといい？」

今日も診察を終え、夜、自室で仕事を片付けていたら、控えめなノックと眉の下がった潤。

翔「いいよ、ここおいで。」

潤「うん、」

ラグの上に座りぽんぽんと叩くと、潤は恐る恐る返事をして座った。

翔「じゅーん？何でそんなに眉毛下がってるの？笑

この前のはもう治ったから大丈夫って智にぃからも言われたでしょ？」

潤「ん、でも...。翔にぃ疲れてるから、俺の話に時間使うより寝てほしくて...。」

あぁ、もう。本当に気遣い屋なんだから。

心配かけたくない、と気遣い屋が過ぎるせいで自分の身を削るのが風山家。

一度だけ、潤が毎度倒れる寸前まで何も言わない雅紀よりも我慢して倒れたことがあって、それから早めに相談すること、という約束が出来た。

翔「俺は潤が苦しんでるのに何もできない方がしんどいなぁ。

でも、自分から来れて偉かったな。ゆっくりでいいから、にぃに教えて？」

ベッドの上のクッションを渡すと、ぎゅっと抱きしめて不安な顔を見せる潤。

潤「なんか、変な夢を見るんだ...。

不定期なんだけど、いつも同じでさ。

和にぃとね、オムライス作ろうとする夢。」

これだけ聞いたなら、誰もが微笑ましい夢だね、と笑顔で言うだろう。

でも、俺は血の気が引く感覚がした。

サーっと顔が青ざめていく感覚がした。

翔「いつも同じ内容ってこと？」

潤「うん。でもね、一回も作れてないんだ。」

翔「作れて、ない？」

潤「いつも、作り終える前に目が覚める。」

翔「そう、なんだ。」

声は震えてない？

ちゃんと答えられてる？

作れてない、という潤にまさかとは思ったが、

目が覚めて本当に良かった、と身体中にどっと汗が吹き出た。

潤「同じ夢だから何か変だなぁと思って、少し不安になっただけ。...ごめん、しょうもないよね。」

翔「大丈夫だよ。今度またその夢見た時は教えて？」

潤「わかった。ありがとう翔にぃ。」

翔「俺も話に来てくれてありがとな。

今日はここで寝る？」

潤「いや、悪い夢じゃないし大丈夫。おやすみなさい。」

翔「わかった。おやすみ。」

きっと、潤が見ている光景は、あの日のことだろう。

もう、隠せない。

俺は智にぃと雅紀に連絡を入れた。

5人で戻ろう、あの日に。