キミの存在価値。1 (ページ37)

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頭の片隅に1 ページ37

和side

俺らが少し弱くなったあの日から、暫く経った。

今日も、自室のカーテンの隙間から朝日が射しこんでいる。

悲鳴もあの日から聞いていないし、

長引いていた翔にぃの具合も良くなったし、

智にぃと雅にぃも具合が悪くなることもなく。

今まで通り、平和な日々を過ごしていた。

一階のリビングに降りると、

今日もソファで二度寝を始めようとしている智にぃと

今日もラテを片手に優雅に新聞を読む翔にぃと

今日も朝のランニングを終えて風呂上がりの雅にぃと

今日も男5人分の美味しい朝ご飯を作ってくれる潤くん。

和「おはよう。ほら智にぃ、起きて。」

智「んぁ？

あぁ、ごめんごめん。おはよう、和。」

智にぃを起こすのはもう小さい時からの日課のようなものだ。

雅「おはよ。…和？」

和「ん？」

雅「…やっぱり元気ない。今日の診察、俺変わろっか？」

どうして雅にぃはいつもこうなんだろう。

別に元気がないわけじゃないんだ。

なんかこう、自分でもよく分かってないんだけど、

頭の片隅に何かがずっと引っかかってる感じ。

いつからかと言われたらちゃんとは思い出せないけど、

あの日が過ぎてからだったような気がするような、しないような。

引っかかるのはいつも家の中で、

いつも5人揃ってる時で。

今までこんなことなかったんだけどな。

智「そうなの、和？

クリニックでのんびりしててもいいよ。」

翔「ドキドキする？苦しい感じ？

風邪ひいてたっけ？」

潤「和にぃご飯食べれそう？すぐ出来るからお粥でもいいよ。」

あぁもう。うちの家族は本当に仕事が早い。

和「大丈夫だよ。

昨日新しいゲームが届いたから、

今日何時に上がれるかなぁって考えてただけ。」

大丈夫、嘘はついていない。

ゲームが届いたのも本当だし、早く上がれるかなって考えていたのも本当。

智「本当だね？」

智にぃの目がキラリと光る。

昔から本当にこの目は苦手だ。

さっきまでソファで寝てた人にこんな目が出来るのか、

今でも分かっていない。

和「ん、本当。」

智「…そう。わかった。

さ、みんなご飯にしよう。」

テーブルの上には潤くんお手製のフレンチトースト。

また頭の片隅に何か引っかかった気がしたけど、

コーヒーと一緒に流し込んだ、ある朝の話。