キミの存在価値。1 (ページ35)

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窮屈ページ35

詩side

「詩、いつまで部活続ける気なの。

お向かいのマキちゃんは二年生で辞めて勉強に集中したんだよ。

うちはお金無いんだから、国公立じゃないと行かせないからね。」

間違ったことは、言ってない。…今は。

それは分かってる。

でも。

私はお向かいに住む3つ年上のマキちゃんじゃないし、

高校時代部活やってこなかった人に何が分かるの。

自分は私立大のくせにどの口が言ってるの。

なんて、心の中で思いっきり反論する。いつものこと。

直接反撃はできない。

ママ達のお金で育ててもらってる分際で何言ってるのって

どうせ殴られるんだ。

「返事をしなさい、詩。」

詩「はい。」

「何なの、その顔は。」

詩「ごめんなさい。」

「はぁ…。どうしてあなたはいつもこうなの…。」

どうせ、奏多(かなた)のことでしょ？

母さん、奏多が寮生活の中学に行ってから

こういうの、増えたよね。

母さんの言葉を聞かないフリして、

二階の自室に逃げる。

2つ年下の弟、奏多。

今は寮がある中学に通ってるから、長期休みにしか帰ってこない。

何かがずば抜けて出来るわけじゃないけど、所謂、器用な人で。

壊滅的に絵心の無い私に比べて、

奏多は小さい頃から上手かったし、

2人で一緒に始めさせられた習字の習い事は、

奏多の方が上手だったし。

小学校から音楽関係の部活を続けている割に、

特にこれといった賞やソロも無かった私と

運動部のくせに、小学校の劇の発表で、ソロで歌った奏多。

まぁ、嫉妬ってやつね。

ただあの人に褒められたかった。

きっと、あの人の一番になりたかったんだと思う。

それでいて、奏多のことが大好き過ぎる私は完全なブラコンだと思う。

勉強は私の方が出来たから、奏多だって勉強のことで私と比べられていた。

奏多だって苦しい思いしてるなら、嫌いになれないよね。

奏多だけだもの、私には。

あの人は、誰かと比べるだけの頭しかないんだと思う。

なんて、冷めてるって？

ひねくれてるって？

うん、よく言われる。

奏「ねぇ詩聞いてる？」

詩「え？あー聞いてない。何だっけ。」

奏多と電話する時だけ、頬が緩む。

この家はやはり、窮屈だ。