キミの存在価値。1 (ページ22)

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記憶4 ページ22

詩side

詩「ん…？しょ、せんせ…？」

翔「ん、おはよう。詩ちゃん。」

目が覚めたら目の前にどアップの翔先生。

あれ、何で、私…？？

詩「！！！！！！

やっ、ごめっ、なさい、はぁっ、やめ、て、はぁっ、はぁっ、」

翔「詩ちゃん！！

大丈夫、大丈夫だよ。びっくりしたね？怖かったね？側にいてあげられなくてごめんね。大丈夫。もう怖いことなーんにもないからね。」

筋肉質な腕でぎゅっと優しく包まれて。

とびきり優しい声で。

少しずつ息が整っていく。

詩「先生、もぅ大丈夫。帰んなきゃ。」

翔「わかった。でも、最後に診察させて？」

詩「いいよ。じゃあ先生、駅まで送って？」

翔「もちろんそのつもりでいたよ。

ほら、胸の音聴きたいから静かにしててね。」

翔先生はそう言って一通り診察をすると、ベッドに腰掛ける私と同じ目線までしゃがみこみ、私の手を握った。

翔「とりあえずは大丈夫そうだね。

本当に苦しくない？家まで送ろうか？」

詩「んーん。大丈夫。苦しくないし、駅まででいい。」

翔「わかった。

じゃあ玄関で待ってて？車の鍵取ってくるから。」

翔先生は私の頭をポンポンと撫でて走って点滴室を出て行った。

確かに今日はびっくりしたし、怖かったけど、そんな自分をどこか冷静に見れる"じぶん"がいた。

まあ、結局パニックにはなっちゃったんだけど。

すぐ落ち着いたのはやっぱり先生たちが凄いからなんだね。

玄関に行くと智先生がパタパタと走って来てぎゅーって抱きしめてくれた。

智「皆でお見送り出来なくてごめんね？

来週空いてる日あったら連絡ちょうだいね。のんびりお話しよう？」

詩「うん、わかった。今日はありがとうございました。」

ぺこりとお辞儀をして翔先生と車に乗った。

ー車内ー

翔「明日も部活？」

詩「うん。休んだ方がいい？」

翔「んー、強制はしないけど、本調子じゃないでしょ？顔色もまだ良くないし。」

詩「大会近いから明日は行きたいな。

それに…」

翔「ん？何か言った？」

詩「んーん、何でもない。」

"翔先生も顔色悪いよ"なんて言えなかった。

もし、私のせいだったら言うべき人は私じゃない。

翔「そう？

でも絶対に無理はしないこと。約束な？」

詩「うん。

…先生もね。」

結局、言えないまま車を降りた。

どうか気のせいでありますように…。