キミの存在価値。1 (ページ14)

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歌声2 ページ14

智side

詩「好きだけど...どうしたの？智先生。」

智「ふふ、よかった。

詩ちゃんさ、僕らがここで、小さい子やお年寄りのためのお話会とか、マジックとかやってるの、知ってるよね？」

詩「う、ん...。」

智「詩ちゃんの気持ちが1番だから、強制しないんだけどね、

皆に詩ちゃんの歌を聴かせてあげたいな、って。」

部活で何かあったかもって潤に聞いたから、少し迷ったんだ。

だから、今、いろんな思いがあるはず。

自分から言えるかな。

詩「...あのね、部活でソロに選ばれたの。

凄く嬉しくて、でも、凄く怖くて...。

こんな気持ちじゃ、ソロが務まる訳ないのにね。」

詩ちゃんは笑った。

苦しそうに笑った。

詩ちゃんの眼から涙が溢れた。

詩ちゃんに駆け寄ろうとした翔と雅の腕を掴んで止めた。

もう少し待とう。

自分がどうしたいのか、ちゃんと言えるまで。

言えたら、いっぱい褒めてあげようね。

詩「...でも、歌うことは好きでいたいの。

だから、その、私でよければ...

ここで、歌いたい、です...。」

俺が腕を離すと、翔と雅は詩ちゃんを抱きしめて、ボロボロ泣いた。

？「綺麗な声ですね。」

雅「坂本さん！」

雅の患者さんの坂本恵さんだ。

雅、自分の患者さん置いてきてここに来たの？笑

恵「何か歌ってくれませんか。」

詩ちゃんの顔を見る。

やらせて欲しいと、強い眼をしている。

本当に歌が、好きなんだね。

俺は、大丈夫だよと伝えるように強く頷いた。

詩「♪～♫～、♬～。」

歌詞のない歌だけど、

言葉では表せないような気持ちになった。

胸が締め付けられるけど、悲しくない。

詩ちゃんの歌を聴いた坂本さんは

涙を流していた。

でも、決して

辛くて、苦しくて、の涙じゃなくて。

旦那さんのことを思い出しているようだったけど、

笑っていたんだ。

坂本さんのあんな笑顔、初めて見たよって雅も嬉しそうにしている。

詩ちゃんの歌は、思いの強い歌なんだね。

だから、歌詞がなくても、感動するんだ。

でも、無理させすぎたかな...。

智「詩ちゃん、

坂本さん帰ったから大丈夫だよ。少し休もう。」

詩ちゃんは、へにゃ、とやわらかく笑うと、

そのまま床にへたり込んだ。