第30話:真夜中の歌声 ページ34
『……』
目を、覚ました。
窓から差し込んでくるのは月光で、
明るい太陽がその姿を隠した後だった。
本部に来てから、どのくらいこの瞬間を体験したんだろう。目が覚める前には弟の夢。優しく自分のことを呼ぶ声は、夢の中でも変わらない。それでも、何か足りないと感じていた。
医務室の壁にあるカレンダーを見ると、
日付は丁度一週間経っていた。
寝ている間食べてないせいで少し体がだるい。
誰も、いないのかな。
ぼーっとしながら、
虚ろな目を動かして外を覗く。
綺麗な月がその瞳に映る。
月は自ら光を放っているんじゃないって、
エミさんの所で見つけた本に書いてあった。
太陽の光で、光って見えるんだって。
その本を読んだときに、ふと自分と重ねてしまった。皆(太陽)の輝きを借りて、自分(月)を光らせている私と。
自分の周りには沢山の人がいる。
羨ましいと感じてしまう程に眩しくて、
近付けば一瞬で消えてしまいそうな
そんな光を帯びている人達が。
元々、私は幽霊という不確かな存在なんだ。
生きている訳でもなく、死んでいる訳でもなく。
前に進むこともなければ、
後ろに戻ってしまうこともないのだ。
『……外、行こう』
いつまでも此処に留まって居られるなんて
考えられない。
ただ、この我儘を言葉に出来るまで、
"自分"に自信が持てるようになるまでは、
ここに、居たい。
心に留めた気持ちを抱え、
そっとベッドを降りると、真っ直ぐに
外へと向かって行った。
ーーーーー
誰も、いない。
そりゃそうだよね。
０時を過ぎるもん、もうすぐ。
外に出た後、ひとらんさんの管理している
バラ園に来た。前に話を聞いたので、どうしても見てみたかったから。
ここは海に近い場所にあるから、
ほんのりと海の匂いがする。
『……〜♪』
気が付けば、あの歌を歌っていた。
母が好きで、何度も何度も聞かされた曲。
優しいピアノの音と重ねて歌うのが好きだった。
それは
人魚姫の歌。
月の光が差し込む海で、
人里に恋い焦がれて夢を追い、
泡となって消えた人魚の歌。
悲しみを歌ったものではない。
嘆きを訴えるものでもない。
ただただ、自分の中にある喜びを歌うだけ。
切なくても、想い人に振り向いて貰えなくても
最期まで
愛することを止めなかった者の歌。
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Yuzu・Neko(プロフ) - ゼロさん» ありがとうございます。頑張りますねっ(｀・ω・´)☆ (2020年2月18日 7時) (
レス) id: 1898adb7ec (このIDを非表示/違反報告)
ゼロ(プロフ) - 柑橘系と猫さん» いえいえ、こちらこそ小説を楽しませてもらってますので！これからも、無理しない程度に更新頑張って下さい！！ (2020年2月18日 0時) (レス) id: f5adb14e6d (このIDを非表示/違反報告)
柑橘系と猫(プロフ) - ゼロさん» わ、本当です。気付きませんでした( ﾟﾛﾟ)!!わざわざありがとうございます、感謝です(* ´ ▽ ` *) (2020年2月17日 17時) (レス) id: 197a9d35a4 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロ(プロフ) - 細かいのですが、第9話の1番最後…「止まってだ」になってます…恐らく「止まってた」と書きたかったのではないでしょうか？ (2020年2月17日 10時) (レス) id: f5adb14e6d (このIDを非表示/違反報告)
Yuzuneko(プロフ) - マヨネーズさん» コメントありがとうございます！凄く嬉しいです。よっしゃ！頑張って続き書くぞ(●’∇’)♪ (2020年2月11日 7時) (レス) id: 197a9d35a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柑橘系と猫 | 作成日時：2020年2月7日 20時
