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09−上目遣い ページ9

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まずい。
不死川さんが、何かを言おうとしている。

それは何となく私には予想できるものだ。


ぎゅ、と強くなる不死川さんの手。





「…桜田、俺は、」

「_わかりました! 不死川さんの言うこと!」

「…?」

「当てて見せましょうか! 答えは、」

「…桜田ァ、」

「……おはぎ! …が、食べたいんですよね?
食後の甘味に!」

「……いや、俺は」

「私も食べたいと思ってたんです
是非ご一緒させて下さい!」





とんだ思い違いな発言なのは分かってる。
こうでもしないと、彼は最後まで言ってた。

"桜田、俺は、"。その続きは、きっと。




 「…あァ、当たりだァ」そう言って私の手を離す。
彼は、切なそうに目を伏せて笑っていた。




馬鹿だ。私はばかだ。上司にこんな顔させて。

それでも気付かない振りをしなければいけない。
この関係を崩さないためにも。





「本当にいいんですか? 奢っていただいて」

「部下に払わせる程腐っちゃいねェよォ」

「だったら、甘味処は私が…」

「いいってェ」





私の、財布を取り出そうとする手を邪魔臭そうに制する不死川さん。

彼は柱だ。しかし、私だって甲である。
いくら相手が上司でもそうですかと一緒くたに財布をしまう女じゃ無い。





「それじゃあ、半分こしましょう」

「あァ?」

「貴方は柱ですが、私と同い年です。
私だって同い年相手に全て払われるのも嫌です」

「…お前は女だろうがァ」

「男も女も関係ありません。不死川さんが無理していないのなんて分かってます。
だけど私だってプライドがあるんです」





「お願い、分かって下さい」不死川さんを見上げる。

すぐに目を逸らした不死川さんは頭をかいて深いため息をついた。


「…お前今自分がどんな顔してんのか知らねェだろォ」と横目で見られて、首を傾げる。

もしかして相当不細工だったのだろうか。
だとしたら目汚ししてしまって怒ってるのだろうか。





「…これだから鈍感はァ」

「え?」

「わァーった! 半分こなァ。それでいいんだろォ」

「…! はい!」





もう一度深くため息をつかれる、
無一郎君然り、私はため息をつかれる性質なのだろうか。


わしゃわしゃと私の頭を撫でる不死川さん。
いつの間にか、私は彼に頭を撫でられるのが心地よくなっている。


そして、「ん」と先程のように差し出された手。

それを私は、今度は迷うことなく握り返した。





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k - あ、はいもう好きです。こんな恋愛したいですわ(?) (6月16日 0時) (レス) @page50 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - ( ☆∀☆)実弥と恋仲になれて、しかも妊娠なんて(*≧∀≦*)幸せ!一推しなのでキュンキュンしました\(^-^)/ 続編とても読みたいです、 (2021年3月15日 0時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
ぬれおかき(プロフ) - ひぃぃえぇぇぇ、さねみんかっこよすぎて辛いです天才です大好きです私は何回でも言いますおそらまめさんだいすき… (2021年2月7日 13時) (レス) id: dde5b1dc7f (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ミズノキさん» ミズノキ様コメントありがとうございます!うわああ嬉しいです…!全然天才なんかじゃありませんが、自信を持ってこれからも執筆させて頂きます!(笑) (2020年7月29日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
ミズノキ - ナニコレサイコー天才ですねおそらまめさんは天才\(^-^)/ (2020年7月27日 16時) (レス) id: fc17fb6cfe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おそらまめ | 作成日時:2019年12月25日 7時

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