34−隣に立つ事 ページ34
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不死川さんは2日で傷の包帯は取れた。
内臓の修復力が凄くて傷跡は残るが後遺症は全く無いらしい。しのぶさんによると。
今日も見舞いに行くと、上半身裸の不死川さんがしのぶさんと一緒に包帯を取っていて、思わずその傷に固まった。
「まだ遅くねェだろ」
夜。
退院祝いに二人で日中から夕食まで一緒に食べた結果がこれだ。
何度目か分からないこのやり取り。
決死の思いで告白した相手は、今や大人びた振る舞いは何処へやら、私の手を握って口を尖らせている。
「……っでも、これ以上遅くなると本当に…」
「じゃあ泊まりゃいいだろォ俺ン家に。お前も俺も明日は非番だろォが。
まだ離したくねェ」
そう言って真っ直ぐ私を見つめる瞳に私は弱い。
駄々をこねる不死川さんがふわりと私を抱きしめて優しいその動作に熱くなる。
「ンとに、今日は一緒に居てェ……。
なァ、………頼む」
いつもの力強い声とは違う、耳元で甘い吐息が聞こえて私はそれに抗う術を持たなかった。
「…お、じゃまします」
「おォ」
柱の屋敷に入ったのはしのぶさんを除けば初めてだった。不死川さんのそれは蝶屋敷よりもまた数段大きい。
玄関も居間も大きいその作りに驚愕して立ち尽くしていると、先に座った不死川さんが隣に座る様に目で促す。
おずおずと座れば、途端に体が彼の方へ傾く。
気付いたら腕の中に居て、またしてもぎゅう、と抱きしめられる。
「不死川さ、」
「…………お前俺の名前知らねェのかァ」
「えっ、今呼んで…………あ、」
「――実弥、だ。A
呼べ」
意味を理解して顔に熱が集まるのは一瞬だった。
彼の顔が見れなくて躊躇っていると耳元で「A」と催促される。
「…………さね、み」
驚く程小さな声しか出なかったけれど、彼の顔を覗き込めば満足そうにその顔をゆるゆると弛緩していた。
耐え切れなくなって勢い良く彼の肩に顔を埋める。
「〜〜こんなに恥ずかしいのは初めてです…!」
「そうかィ。……そんでお前喋り方もどうにかしろ」
「えっ」
「漸く手ン中入ったんだァ。そんな他人行儀な口調やめろやァ」
「はい……じゃなくて、うん、?」
「あァ」
肩口に顔を埋めて確かめる様に私を抱きしめる。
苦しい程のその抱擁が、_実弥が相手だとこうも愛しく感じる。
漸く私はこの人のものになれた。
私も彼と同じように、彼の背中に手を回して暖かい匂いを確かめた。
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k - あ、はいもう好きです。こんな恋愛したいですわ(?) (6月16日 0時) (レス) @page50 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - ( ☆∀☆)実弥と恋仲になれて、しかも妊娠なんて(*≧∀≦*)幸せ!一推しなのでキュンキュンしました\(^-^)/ 続編とても読みたいです、 (2021年3月15日 0時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
ぬれおかき(プロフ) - ひぃぃえぇぇぇ、さねみんかっこよすぎて辛いです天才です大好きです私は何回でも言いますおそらまめさんだいすき… (2021年2月7日 13時) (レス) id: dde5b1dc7f (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ミズノキさん» ミズノキ様コメントありがとうございます!うわああ嬉しいです…!全然天才なんかじゃありませんが、自信を持ってこれからも執筆させて頂きます!(笑) (2020年7月29日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
ミズノキ - ナニコレサイコー天才ですねおそらまめさんは天才\(^-^)/ (2020年7月27日 16時) (レス) id: fc17fb6cfe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2019年12月25日 7時