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27−きっと目が覚めたら ページ27

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酷く優しい声がした。
私の涙はひゅんと止まって、勢いよく顔を上げる。


そこには薄らと目を開けて此方を見遣る不死川さんの姿があった。

泣き止んだ私をみて「泣き止んだなァ」なんて、偉い偉いと頭を撫でる。





「…〜〜っ不死川さんっ!!」

「……ッグ、」





彼の首に手を回して思いっきり抱きつく。
しまった。なんて軽率な事を。彼は大怪我をしてるのに。

「すみません、」と慌てて離れようとすると、それを許さない様に不死川さんが優しく私の背中に手を回した。





「お前は泣いてばっかだなァ」

「…すみません」

「別に怒っちゃいねェよ」

「違うんですっ、その……怪我、」

「ア?」

「…私のせいで……不死川さん、怪我して…」

「お前のせいじゃねェ。俺の不注意だ」

「でも私…本当に足手纏いで…役立たずで……っ」

「そんな事ねェ」





彼が優しい手で頭を撫でてくれるたび、呼応する様に涙が溢れてしまう。
せっかく止まった筈の涙を、不死川さんはやっぱりぎこちない指で拭ってくれる。





「……っぐす、」

「お前はよく泣くなァ」

「そんな事…ないです…不死川さんの、前だけなんです」

「……」





緩くなった大きな手。
そのまま俯いていると、その大きな手は私の頬に添えられる。

ゆっくりとした動作に、私は泣きながらその手を押し返した。


少し低い、「桜田」の声。





「何でだァ」

「不死川さんは……私なんか、釣り合わないんです…!」

「アァ…?」





子供の様に泣き続ける私を、仕様がないな、みたいな顔で頬杖ついて見守ってくれる優しい顔。

その瞳には、どうしようもないくらいぐちゃぐちゃに崩れた顔の私が映っていた。





「不死川さん…、どうして私なんですか…っ
私本当は、弱虫だし怖がりだし、…っぐずで牛蒡が嫌いで人の目ばかり気にして…!」

「あァ」

「情けなくてドジで足が遅くて…それから…!」

「全部知ってらァ」





わんわん泣き喚く私を、赤子をあやす様な手で不死川さんが撫でてくれる。

嗚咽はそれでも止まらないから、遂には不死川さんがくしゃっと目を細めて笑って、私をその安心する胸に抱き締めた。





「…もう終いかァ?」

「…ぇぐ、」

「……クク、子供みてェだなァ」





そう言って笑う顔はずっと甘くて優しい。
この顔を長く見ていなかった。

そんな気持ちを知ってか知らずか、不死川さんはまた愛しそうに笑った。





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k - あ、はいもう好きです。こんな恋愛したいですわ(?) (6月16日 0時) (レス) @page50 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - ( ☆∀☆)実弥と恋仲になれて、しかも妊娠なんて(*≧∀≦*)幸せ!一推しなのでキュンキュンしました\(^-^)/ 続編とても読みたいです、 (2021年3月15日 0時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
ぬれおかき(プロフ) - ひぃぃえぇぇぇ、さねみんかっこよすぎて辛いです天才です大好きです私は何回でも言いますおそらまめさんだいすき… (2021年2月7日 13時) (レス) id: dde5b1dc7f (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ミズノキさん» ミズノキ様コメントありがとうございます!うわああ嬉しいです…!全然天才なんかじゃありませんが、自信を持ってこれからも執筆させて頂きます!(笑) (2020年7月29日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
ミズノキ - ナニコレサイコー天才ですねおそらまめさんは天才\(^-^)/ (2020年7月27日 16時) (レス) id: fc17fb6cfe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おそらまめ | 作成日時:2019年12月25日 7時

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