13−唇 ページ13
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「…!? 桜田ァ、」
気がつけば泣いていた。
何が悲しいかって、わからないけどとにかく苦しい。
訳も分からずに涙が止まらない。わからない。
どうしてこんなにも私を好いていてくれてるのかも、
私が感情を抑えているのかも、
どうしてこんなに不死川さんの事でいっぱいなのかも。
「…ッ分からないんです…!」
「…!」
不死川さんの首に手を回して私から接吻をする。
離れる私の後頭部に手を回したかと思うと
彼は乱暴に唇を重ね合わせた。
何度も接吻されて酸欠になる。
常中は意味を為していない私に対して
不死川さんは息ひとつ乱さず私の頬を撫でる。
「A…」
「……ごめんなさい、」
最後に一度背伸びをして私から唇を重ね合わせた。
ゆっくりと彼の肩を押して踵を返す。
不死川さんが小さく「…おやすみィ」と言ったのに返事をせずに、私は家路に着いた。
カタン、
家の戸を閉めてすぐに玄関先でへたり込む。
__不死川さん、どうして私なんか好きになったの。
私はあなたに釣り合うような人間じゃない。
去り際に見せた彼の酷く傷ついた顔が忘れられない。
どうか私の事なんて忘れて、
「…っ、ぅぅ、」
私気付いちゃったの。
気づけば最初から、
不死川さんの事が好きでした。
「胡蝶さん」
「あら、桜田さん。どうされましたか?」
「小物屋で見つけたんです。良かったら」
「ありがとうございます。使いますね」
相も変わらず美人な胡蝶さんは、私が手渡した蝶の髪飾りを懐に仕舞って愛らしい笑顔になる。
「それで、」彼女はにこりと笑う。
「何があったんですか? 不死川さんとの逢引で」
「……ちょっと待ってくださいどうしてそれを知ってるんですか。それより逢引って…!」
「あら、てっきり御二方は承諾してるのかと思ってました。宇随さんが嬉々と言いふらしてましたよ」
「…あの人は…っ!」
まぁまぁ、と私を宥める胡蝶さんに免じて私は彷彿とさせながらなんとか座り直す。
そして改めて「何があったんです?」と聞かれたので昨日の事を全て話した。
「そうですか。漸く不死川さんも」
「…漸くって、知ってたんですか?」
「勿論です。そもそもあれだけあからさまにしていたのに気付かない桜田さんの方が不思議でしたよ」
「うっ」
いや、まあ気付かない振りをしていたんだけど。
そんな事は言える筈も無く、私は唸るしかなかった。
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k - あ、はいもう好きです。こんな恋愛したいですわ(?) (6月16日 0時) (レス) @page50 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - ( ☆∀☆)実弥と恋仲になれて、しかも妊娠なんて(*≧∀≦*)幸せ!一推しなのでキュンキュンしました\(^-^)/ 続編とても読みたいです、 (2021年3月15日 0時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
ぬれおかき(プロフ) - ひぃぃえぇぇぇ、さねみんかっこよすぎて辛いです天才です大好きです私は何回でも言いますおそらまめさんだいすき… (2021年2月7日 13時) (レス) id: dde5b1dc7f (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ミズノキさん» ミズノキ様コメントありがとうございます!うわああ嬉しいです…!全然天才なんかじゃありませんが、自信を持ってこれからも執筆させて頂きます!(笑) (2020年7月29日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
ミズノキ - ナニコレサイコー天才ですねおそらまめさんは天才\(^-^)/ (2020年7月27日 16時) (レス) id: fc17fb6cfe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2019年12月25日 7時