無理に作った笑顔で2 ページ38
零は私と視線を合わせるように、座り込んだ。
「まず・・・我輩が本物の吸血鬼である事を話さなかった事・・・言い訳にしか聞こえんかもしれんが、話すとお主が怖がると思って話せなかったのじゃ。」
今朝の冷たい視線は消えていた。口調もいつも通りに戻っていた。
ホッとすると同時に、何故か胸が痛んだ。
「そして・・・お主の血を吸った事。」
零の言葉で、改めて自分が血を吸われた事を実感した。
無意識に私の手は首筋に触れていた。
触ってももう、痛みは感じない。
すると零の手が伸びてきて、私の手に重ねられた。
「本当に、すまんかった。お主の事は傷つけたくなかった。だが、結局欲望に勝てず・・・お主を痛い目に遭わせてしまった。謝って済む事ではないが・・・謝らせておくれ。」
重ねられた零の手は温かい。
私は混乱していた。
一体、どっちが本当の零なのか。
今、悲しそうな顔で私に謝罪をしている彼。
血を吸われた時の、優しさを感じない冷たい彼。
何故かどちらも違うような気がしていた。
「零・・・私、零が・・・分からない。本当は、どんな人間なの・・・?今の零も、私の血を吸った時の零も・・・本当の零に思えないよ・・・私の事だってそう。私の事、どう思ってるの?クラスメイト?餌?」
質問しすぎだ、と思った。
でも、分からないのだ。
彼の本当の姿が。彼の本当の気持ちが。
「我輩にとって、Aは・・・」
零はそこまで言って、黙り込んだ。
しかしすぐに
「いや、こんな事言う資格・・・俺にはない、よな・・・」
と言い、僅かに笑った。
笑っているが、とても悲しそうに見えた。
「ーーーA。」
名前を呼ばれるとともに、私は零に抱きしめられた。
吸血された時を思い出し、思わず逃げようとする。
でも伝わってくる温もりが、抵抗しようとする気持ちを消した。
「・・・今まで、ありがとう。お前と一緒にいれて・・・楽しかった。本当だからな。」
零は私から僅かに体を離して、微笑んだ。
「でも、もう一緒にいられない。」
「また、お前を傷つけるから。」
「だから、」
「さよなら、A。」
68人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユミカ?(プロフ) - 朱蝶さん» まさか私の作品を読んでくださるなんて!ありがとうございます!朱蝶様の作品に比べたら全然駄作ですが、更新頑張ります♪もうすぐ豹変するので楽しみにしててくださいw (2016年9月2日 21時) (レス) id: adf92d0f83 (このIDを非表示/違反報告)
朱蝶(プロフ) - コメント失礼します。読みやすくてさくさく進みます!そして吸血衝動で豹変する零が楽しみでなりません!笑 更新頑張ってください!(*´罒`*) (2016年9月2日 20時) (レス) id: cf009a00ba (このIDを非表示/違反報告)
ユミカ(プロフ) - ヴァリさん» コメントありがとうございます★読みやすいなら良かったです!まだまだな文才ですが、これからも更新頑張るのでぜひ読んでください! (2016年8月23日 23時) (レス) id: 424560f613 (このIDを非表示/違反報告)
ヴァリ(プロフ) - コメント失礼します♪とても読みやすい小説ですね!更新楽しみにしています! (2016年8月23日 23時) (レス) id: b85a4ac4b7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユミカ | 作成日時:2016年8月20日 23時