二度目 ページ37
「じゃあ、今日の練習はここで終了。明日は朝から試合だから、朝5時までに王帝の校門に集合してくれ」
野坂先輩の言葉に、部員たちが元気よく返事をする。
あんなに練習して疲れてるはずなのに、すごいなぁ。
「A、帰ろう！」
挨拶が終わると、光がトコトコと駆け寄ってくる。
きらきらと目を輝かせている姿は、まるで子犬のよう。
『うん、帰ろっか』
そう言って、光と一緒に充を呼びに行こうとすると、
「紅月さん」
野坂先輩が、私を呼んだ。
『なんですか？』
「僕らも行くよ。一緒に帰ろう」
私の問いかけに、なんの躊躇いもなく答える先輩。
『でも野坂先輩たちは寮だから、時間の無駄じゃないですか？』
おずおず聞くと、彼はなんともないという表情で答えた。
「そんなことないよ。それに、僕らは君を守るって言ったじゃないか」
『先輩...』
なぜかわからないけど、野坂先輩を見ると安心する。
なんでだろうね。
私は彼の言葉に、思わず口元を緩めた。
野坂先輩も、私に優しく笑いかけてくれる。
と、
「野坂、近い」
いつの間に来ていたのか、充が私と野坂先輩の間に入ってきた。
「ごめんごめん。ほら、ちゃんと彼女を守ってあげるんだよ」
「そんなことわかってる」
クスクスと笑って言う先輩に、充はムスッとした表情で返事を返した。
帰り道。
「すっかり暗くなっちゃったね」
「そうですね。野坂さんと西蔭さんは、帰りは大丈夫なんですか？」
「心配ないよ。ね、西蔭？」
「もちろんです。あなたは俺が守ります」
「ああ。期待してるよ」
野坂先輩と西蔭先輩、光。
三人の会話を聞きながら、私は野球部について考えていた。
今日、野坂先輩が立てた仮説。
あれが本当だとしたら、武石くんはなんであんな表情をしたんだろう。
そんなことを思っていると、
「！」
光が、足を止めた。
「光くん、どうかしたかい？」
急に足を止めた光に、野坂先輩が不思議そうに問いかける。
光を見ると、真剣な表情で辺りを見回していた。
まさか、
「まただ...」
「また？」
ぽつりと呟いた一言に、先輩が反応する。
光は野坂先輩に目を向けて言った。
「また誰かが、俺たちのあとをつけてるんです」
やっぱり！
「つけられたのは二度目か」
先輩が目付きを変えた。
そして、
「ちょっと見てくるよ、君たちは先に行っててくれ。西蔭、みんなを頼んだよ」
「わかりました」
そう言った彼に笑いかけ、野坂先輩は元きた道を戻っていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 58人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Flow(プロフ) - コメント欄の下の方に荒ぶる受験終わりがいる(語彙力) お久しぶりですにゃんたまファシルさん。 しばらく読んでなかったんですが、めっちゃ増えてて驚きました(*^^*) これからも頑張ってください(私が誰かは察して下さいな) (2020年7月11日 9時) (
レス) id: d234e6b38d (このIDを非表示/違反報告)
にゃんたまファシル(プロフ) - 杳覇さん» ぎゃーっ！え、もう嬉しすぎます！まじでホントにありがとうございます(語彙力)更新頑張らせてもらいますっ！ (2020年6月20日 20時) (レス) id: 0e74a4daf4 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - 初コメ失礼します！他にない状況設定、主人公ちゃんの無理のない性格、魅力的なオリキャラとどれをとっても文句のない、めっちゃ面白い作品ですね！！一星兄弟や野坂くん達も良い味出しててキュンときました！お体に気をつけて、更新頑張って下さいね！！ (2020年6月14日 22時) (レス) id: 37d55cd9aa (このIDを非表示/違反報告)
にゃんたまファシル(プロフ) - りら。さん» ありがとうございます！いやいや、あなたの作品もいいと思いますよ！誰も見ないならこの私が見ます((( (2020年5月18日 12時) (レス) id: 0e74a4daf4 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんたまファシル(プロフ) - あかりさん» 大体な野坂くんもいいですよね (2020年5月18日 12時) (レス) id: 0e74a4daf4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
