異名決め ページ26
タオルとスポーツドリンクを配り終わり、ベンチに座る。
みんなで休憩をとっていると、
「みんな、少し相談があるんだ」
野坂先輩がそう言った。
相談？
「なんですか？相談って」
みんなが聞きたいことを、光が先に質問する。
「相談の内容は、彼女の"異名"を決めたいんだ」
異名？
「なるほど。確かにライセンスを作るには必要ですもんね」
光が納得したように頷き、周りのみんなも頷く。
えっと、理解できてないのって私だけ？
まごついていると、充が近寄ってきて耳打ちしてくれる。
「意味はわかるだろうけど、ライセンスを作るには絶対に必要なんだ。例えば俺と光だったら青き一等星、野坂だったら戦術の皇帝とか。その他もエトセトラエトセトラだ」
丁寧にありがとう、充。
「なにかいい案はあるかい？」
野坂先輩はみんなに意見を求める。
だけど、みんなはどうする？と言いたげに顔を見合わせるばかりだ。
まあ、しょうがないよね。
私のことなんて、みんなはまだ知ったばかりなんだから。
「紅月さん。君はどんな異名がいい？」
突然話題をふられ、私はぎょっ、とする。
『え、えっと...特にはなにもない、です』
だって、自分に異名をつけろって言われても、さっぱりわからないもの。
「そうか。じゃあ充くんと光くん。なにかいい案はあるかい？」
それを聞いた二人は、少し悩むしぐさを見せる。
そして、
「すみません。思いつかないです」
「俺も」
二人ともギブアップ。
やっぱり難しいよね。
と、
「あ、そうだ」
野坂先輩が突然、なにかを思いついたかのように手を打った。
『どうしたんですか？野坂さん』
葉音先輩が質問すると、野坂先輩は言った。
「今から説明するよ。みんなも聞いてくれ」
いったいなにを思いついたんだろ？
「彼女の異名を決めるために、ここにいくつかの紙を用意したんだ。一人一枚ずつ紙を取っていって、その紙に彼女の異名を書いてほしい」
それを聞いた西蔭先輩が、納得したように頷く。
「つまり、この紙に書いたものを見せ合い、どれが紅月にふさわしいかを決める、というわけですね」
「正解だよ。さすが西蔭だね」
そう言われた西蔭先輩は、少し誇らしげな表情をする。
よっぽど野坂先輩のことを尊敬しているんだろうなぁ。
「というわけだ。じゃあみんな、紙とペンを渡すから、なにか案を書いてくれ」
こうして、配られた紙を前にした部員たちは、しばらくの間悩み始めるのだった。
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