【戦ブラ】私≒厄魔

one in two__semi ページ33

××







たとえ悪口を言われようと、陰口を叩かれようと

伊達軍を裏切らずに戦う者はすべて味方で

大切な仲間だった。



そして、大切な仲間を殺した者は

どれだけ優秀だとしても、人が好くても

憎むべき敵でしかない。





A「私は、仲間を、殺した……。救うはずだったのに、救うべき人たちに助けられて、守るべき私が、どうして最後まで立ってるの……!?」





無感情が悲しみへ

悲しみが怒りへ

怒りが無感情へ。



見るに耐えないほど切り刻まれ

目も当てられないほど流れた血が形作る、狂い始めた体。



自我を失い、正気を失い、仲間を失い–––––


何もかも失ってしまったと、そう思っていた彼女は

背後から聞こえる声に足を止めた。





「A、様……」





虫の息の伊達兵の自分を呼ぶ声に

Aはハッと目を覚まし、振り返る。


まだ生きている、けれど、既に己の腕と頭を微かに上がることしかできない、血まみれの姿。


懸命に、何かを伝えようとしているのか、助けを乞うているのか

先へ、上へ、手を伸ばす。





A「……っ」





「早く、早く」
そう急かす気持ちが、Aの重い足をゆっくり動かした。


二人の距離が縮まり、Aは彼の手を取ろうと

血塗れのぬるりとした右手を恐る恐る伸ばす。


触れれば壊れてしまいそうで

けれど
触れなければ消えてしまいそうで。



震えを誤魔化すこともなく

その手に向かって一心不乱に腕を伸ばす。


けれど、あと、どれくらいだったのだろうか。



触れたか、触れていないか。


Aの手がそれを掴むことはなく

彼の手は、音を立てて、ポトリ、と落ちた。





A「っ……ぁ」





唇が震え、視界が真っ赤に染まる。



悲しみで目から溢れてくるものは

いつもの透明でしょっぱい液体ではなく


赤い、紅い、鉄の味がするもの。



Aの目に溜まり、頬を伝い落ちるそれが

彼女の限界を知らせる。





A「……晴れの日、か。今日の空って、こんなに赤かったっけ……」





光の失った目で空を見上げれば

焦点の合っていない瞳に眩しい陽の光が差し込む。





A「政宗。私……守ったよ。伊達の領地を、政宗たちを……。でも、政宗との約束は守れなかった。だから、もう戻れない。あの城には帰れない……」





頬を伝う、紅い透明な涙。


最後に笑みを残し

Aの体は音もなく崩れ落ちた。









微かに揺れる灯火が

春の暖かな風にさらわれ


__________伊達の元から去っていった__________

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