one in two__37 ページ10
××
Aが痛む体を何とか起こそうと布団の中でモゾモゾしていると
見兼ねた謙信がそばに寄って彼女の上半身にそっと手を添えた。
謙信「大丈夫か?」
背中に感じる温かな感触に
首筋にかかるくすぐったい吐息に
A「ぁ……大丈夫、です」
彼女の頭に何故か一瞬政宗の顔が浮かんだ。
無表情であったり、怒ったり、泣きそうであったり……
彼の顔がだんだんと濃く、それにつれて胸の痛みが増していったとき
謙信の一言で急激に体の熱が冷めていくのを感じた。
謙信「伊達政宗の方には私から書状を出しておいた。傷が癒え次第、お前を伊達の元へ返すとな」
A「っ……や、やめてっ!」
気が付けばAの手は謙信の腕を掴もうとしていた。
けれどその手は、自分で支えることのできない彼女の体ごと謙信の胸に飛び込んでしまった。
謙信のたくましい胸板が、弱ったAの細い体を受け止める。
謙信「なっ……!お、お前……っ」
A「嫌……嫌だ嫌だ!やめてっ!お願い!それだけはっ……!!」
謙信「……!?」
ほんのり赤くなっていた謙信の顔に青みが増してゆく。
部屋に留まり切らない叫び声に景勝は圧倒され
髪の毛を振り乱し、心を暴れさせる姿に謙信は慌てふためいた。
謙信「落ち着け……!お前は何をそんなに恐れている?」
A「……い、嫌だ……帰りたくない。政宗の元に、戻りたくない……彼に、私の姿を、もう一生、見せたくない……」
落ち着いた代わりに、今度はガタガタと肩を震えさせる。
鳴り止まない歯の間から溢れる言葉。
謙信はどうしていいか分からず、呪文のように出てくる声を彼女ごと大きな体で包み込んだ。
謙信「大丈夫だ。私がいる限り、お前を、お前の恐れるものから守ってやる。だから、そんなに怯えるな……」
A「……」
Aは久し振りに、心の底から泣き尽くした。
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結城心愛 - 紅華さん» そうですね……雑兵より断然強いのは当然として、主要キャラとはそこそこ戦えるものの勝つまでには至らない、といったところでしょうか? (2018年8月11日 19時) (レス) id: 5f6cda4546 (このIDを非表示/違反報告)
紅華(プロフ) - お疲れ様です 主人公の強さってどれくらいですか? (2018年8月5日 20時) (レス) id: 986e690a37 (このIDを非表示/違反報告)
結城心愛(プロフ) - レインさん» たくさんのリクエストありがとうございます!取り合いまでいくかどうかは分からないのですが、一応そんな感じのシチュエーションは元々考えていたので入れようと思います。もう少し甘めも了解しました( ̄^ ̄)ゞ (2018年7月22日 17時) (レス) id: 5f6cda4546 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - 景持さんとの絡みありがとうございます!次はもうちょっと甘めがいいです!あと政宗さんと謙信様か景持さんの主人公の取り合いみたいなの見たいです!(できればで平気です!) (2018年7月22日 14時) (レス) id: 5763350924 (このIDを非表示/違反報告)
結城心愛(プロフ) - レインさん» コメントありがとうございます!なんか色々お褒めいただけてすっごく嬉しいです(●´ω`●)最近更新できてなくてすみません、でもなるべく早く更新できるよう頑張ります! (2018年7月20日 17時) (レス) id: 5f6cda4546 (このIDを非表示/違反報告)
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