だしにされる同僚 ページ7
「おはよーございまーす」
「おう、三葉。元気だな…って、今年もすごい量のチョコだな」
「あはは、そうですね。多分全部義理ですよ」
両手をいっぱいにして出社してきた三葉を、湊は帰るときには増えているのだろうと思いながら同じように乾いた笑い声を上げる。
三つ葉には絶対に勝てそうもない。
まぁ、そんな三葉と張り合えるぐらい優秀な奴もここにいるが。
そもそも顔面偏差値がカンストしてて優秀だから営業部(こっち)に来たんだろうと思う。
簡単に会社から契約とれそうだし、真面目だし、誠意もある。
湊は、どうしてそんな奴が自分の隣の席なのだと思っている。
「おはようございまぁす」
ギリギリ出社に間に合わなかったらしい朝倉が遅れて入って来た。
いや、遅れたんだからそんな悠々と入ってくんなよ、とみんなが思う。
そして、その両手には当たり前のように三葉と同じくらい大きい紙袋が二つ。
おそらく三葉と同じ量だ。三葉と反対の湊の席に座った朝倉は、二人にはよ、と声をかける。
二人も同じように返し、業務に戻る。両サイドのコンビで回る外回りが午後からで、そのあとは直帰だと言っていたな、なんて思い出す。
早く午後になってくれることを祈ろう。
席の配置、思いっきりミスっただろ、なんて思う湊は肩身が狭い。
というか、ここ二人でよく組むんだからそこを隣同士にすればいいのに。
湊は内心で届くはずのない不満を漏らしながら仕事を進める。
毎日午後直帰にしてくれたらいいのに。
そうすれば俺の狭い肩身が広くなるのに。
いつも湊が考えていることを今日も相変わらず考える。
変なことを考えながらの業務のせいか、全く仕事は捗らない。
「湊、今日一緒に昼飯食いに行こう」
「三葉はもう仕事終わったんか。まだ９時なのに昼飯気分なんか」
「いや、そんなことないけど？」
仕事が一段落したらしい三葉は軽く伸びをして昼飯にと湊を誘う。
ただいま出社してから少し経った約９時。
９時少し過ぎなのに、と呆れながら返す湊に、少し挙動不審な様子を見せる三葉。
そんなことないならはよ手動かせ、と湊は言う。
今日においても、ここまで挙動不審な人はいないだろうと思わせるくらいには目は泳いでいるし、時たま声が裏返る。
そんな三葉を白けた目で見た湊は、あからさまに溜息を吐いてデスクワークに戻る。
どーせ今日ものろけられるんだろうと思うと気が乗らない湊を、少し嫌そうに見る朝倉。
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