先輩と後輩 ページ4
今日は待ちに待ったバレンタイン。
やっぱり彼はイケメンだから、女子からたくさんチョコ貰ってるんだろうなと思ったり、思わなかったり。
そもそも、旭先輩に今日会えるかどうかが一番重要なんだけど。
先輩の味の好みとか知らないから、ビターもミルクもホワイトも用意したけど、何が好きなんだろう。
もっと知りたいだとかそういう気持ちも平気で沸いてくる。
さりげなく聞けば、さりげなくなら問題はない……はず。
だって、あれでしょ、重すぎたら別れられるんでしょ。
せっかく好きな先輩と付き合えたのに別れてとか言われたら泣くよ、僕。
「せ、先輩―――」
「ちょっと待って、チョコあげるからさぁ〜」
ちょうど角を曲がろうとする旭先輩を見かけ、声を掛けようとすると、甲高い先輩らしき女子生徒の声が僕の声を遮る。
手に持ってるのは小さくて淡いピンクの紙袋。
多分チョコ。
だってほら、チョコだと言って先輩に渡してるし。
でも去年見かけた時みたいにチョコのたくさん入った紙袋は持ってないような。
先輩チョコ嫌いだっけ。
でも去年は受け取ってたからそんなわけないと思うけど。
先輩というのは、旭先輩で、部活が同じ演劇部に入っている。
そして、僕の彼氏にしておくにはもったいないほどの美形だ。
だからまぁ、こうして女子生徒が近づいてくるんだけど。
正直そのことに関しては嫉妬はしていない。
旭先輩はイケメンだし、当たり前のことに嫉妬しても。
むしろ、恋人がいるのに、なお言い寄ってくる人がいるほどイケメンな彼氏なんだ、って自慢したいくらいだ。
「今年はチョコいらないから」
近寄ってきた女子生徒を冷たく一蹴する。
ああなるほど、チョコいらないって言ったから今年はあのでかい紙袋がないのか……って、え。
チョコいらないの?
僕がチョコを持ってきた意味は何だったの。
僕が浮かれすぎてた?
今日は部活あるし、先輩に会えるし、それだけで十分なはず……はは。
◇
部活も終わり、結局チョコは渡せずじまいで部室を出る。
旭先輩には話しかけられたし、一緒に帰れるのは分かったから、それだけで十分だし。
先輩、甘いの苦手だったかな。
「お、いたいた。遥斗、帰ろう」
「旭先輩!」
部室から荷物を持った旭先輩が出てくる。
やっぱり主演って忙しいのかな。
旭先輩を部長に、って声も上がっていたらしいし。
旭先輩は辞退したけど。
そういうの、全然興味なさそうだったしな。
でも、このチョコはどうしよ。
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