バレンタインデー ページ11
まぁ、他の人にするかとも考えはした。
二年連続同じ人はどうかと思ったんだけど。
「しっくり来なかったんだよな……」
他の友だちは誰もチョコが似合わないというわけじゃないんだが。
コイツラじゃねぇなってなったんだよなぁ。
「あ、あの、結希くん、コレ……」
俺が一人首を傾げていると、一人の女子生徒がある袋を後ろ手に持ってきて結希に話しかける。
こっちからだと中身も見えるんだけど、良いのかコレ。
俺のチョコに夢中になっていた当の本人は、話しかけられると、手を立てて待ってとジェスチャーでいう。
そのうちにチョコを飲み込み、いつもどおりの笑顔でどした？ なんていう。
「これ、チョコなんだけど……」
「うん、そうだね？」
「結希くんに、あげる！」
「え、マジ？」
カサっと音を立てて、結希の前に見せると、全く意味をわかっていない結希は少し首を傾げる。
意味をわかってくれない結希にしびれを切らし、彼女は袋を差し出す。
喜んで受け取ろうとした結希はピタリと手を止めた。
「それと、付き合ってほしくて……」
「コレ受け取ったらイエスになる？」
「え、うん」
「だったら受け取れない。ごめんね」
顔を真っ赤にしながら告白する彼女に、結希は特に何も感じていない様子で尋ねる。
見てるこっちまで恥ずかしくなるような甘い空間が流れているというのに。
戸惑いながら肯定する。
その言葉を受け、結希は謝りながら優しく押し返す。
「理由を、訊いても良い？」
「オレは中村さんのことをよく知らないし、多分付き合っても桜弥とばかり遊んでると思うんだ。
それはセイジツってやつじゃないと思うし、好きでもないのに付き合うのは悪いから。ごめんね」
おずおずと理由を尋ねる彼女に、結希は案外しっかりした理由を真っ直ぐ伝える。
その理由を聞いて納得したのか、彼女はそっかと小さく零して頷き、その場を去っていった。
それを見ていて、何故か少しだけ、結希に彼女ができなくてホッとした自分がいた。
「……甘いな」
終わり
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←2023 2/14 バレンタインデー
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