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「お久し振りです、クレアさん」
「魔王様はどこにいらっしゃいますか」
クレアさんの言葉に、後方にいるゼオルがびくりと肩を震わせる。
あぁ、この感じはもしかしなくとも仕事を放置してこっちにきた感じだな。
すると、ゼオルが口を開く前にウラタ様がその前に誰なのか教えてくれという。
おれの頭には疑問符が浮かんだ。
ゼオルがサボっていることは知っていた。
というより、多忙な魔王がこうしてきているのは、大抵はサボっている。
おれには、どうしてサボれるのかよくわからないが、一次期領主とは違って、部下がたくさんいるのだろう。
「申し遅れました、王太子殿。わたくしは領主補佐“クレア”と申します。以後、お見知り置きを。
魔王様の言っていたのは彼とルシフのことだったのですね」
「クレアさんの目的はゼオルでしたっけ。たしかにここにいますけど、屋台を堪能しているようですし、俺たちを運んでいただいてお疲れのようなので、もう少しまってはくれませんか」
優先するべきは位の低い方より高い方、女との取引より男の友情だ。
おれが適当にそう言えば、クレアさんも納得してくれたのか、わかりました、と言ってくれる。
それからしばらく話した後、ウラタ様がおれを誘ってくれたので一緒にいくことにする。
ウラタ様とは、色々なことを話したが、クレアさんは何者なのか、どうしてゼオルを連れ戻そうとしたのかも尋ねてきた。
「どうせ、ゼオルはサボってここに来たんだろう」
「ぐぅ……」
「え、よく仕事ぽっぽいてこっちに来れるな」
「ぐぅぅ………」
おれの問いに対して、何も答えられずにいるところを見ると、図星だったようだ。
それにしても、ウラタ様も意外と容赦がない。
まあ、ゼオルがそういう性格なのは知っているが。
おれの呆れた視線と、ウラタ様の信じられないと言いたげな目に晒され、小さくなっていた。
その後、ウラタ様が、おれと魔族はなぜこれほどまでにかながいいのかとも聞いてきた。
「それはこちらから説明しよう。ルシフはどうか知らないが、魔族は基本的に、よく思わない輩はいないよ。土地が豊かになった、害獣の退治を手伝ってくれた、エトセトラ。最初はルシフもあまりいい顔はされなかったが───」
ゼオルSide
確かにルシフははじめ、いい顔はされなかった。
それはひとえに、人族だから、という理由だ。
長年いがみ合っていた魔族と人族、そう簡単に不可侵条約を結んだから仲良くしようとは言えない。
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のんしゅ(プロフ) - ほんとですか!? 教えてくださりありがとうございます (2022年6月30日 19時) (レス) id: e89ed18301 (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - オリジ/ナルフラグが立っているようですので、外していただくようお願いします。 (2022年6月30日 8時) (レス) id: 09c503bb24 (このIDを非表示/違反報告)
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