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今日くらいは仕事なんて考えなくても、良いか……。
おれは仕方なしにウラタ様の提案を飲む。
おれが了承したのを見て、嬉しそうに微笑んだあとに本格的な眠りにつくウラタ様。
その顔を少し眺めていると、段々とまぶたが重くなってくる。
その重みに任せて、意識を沈めていった。
◇
翌朝、店の人に扉をノックされて目を覚ます。
思ったより熟睡していたらしい。
少々お待ち下さい、なんて扉に声をかけたあとに、少し崩れた身なりと髪型を直すべく上半身を起こそうとすると、なにか重たいものが腹の上に乗って起き上がれない。
「だれ……ぜオルか。───おいまて、なんでこいつがここにいる? あっちのベッドに寝てたはず……」
ウラタ様をどかし、ゼオルをどかし、立ち上がって伸びをする。
起こすのは来てくれた人が戻ってからでいいかな……。
昨日は結局、そのまま寝てしまったし。
一応、朝ごはんを食べたらすぐ出発できるように準備だけはしておくか。
「ご要件は何でしょう」
「朝ごはんの時間でございます。普通は下の食堂で食べるのですが、時間をずらしてお作りになりますか?」
「いえ、今回は火急の用でここに来ましたし、ウラタ様もゼオル様もお気になさらないでしょう。食堂に向かって一緒に食べます。起こしてくださりありがとうございます」
にこりと軽く微笑んでお礼を言う。
ゼオルなんて使用人と一緒に同じご飯を食べるのが日課だしな。
ウラタ様もこの街に来たのに宝石だ何だに目もくれないし、対等に接する方だから気にもとめないだろう。
むしろわくわくしそうだ。早く起こさないと。
それでは、と言って部屋に戻る。
急いできたから別に荷物があるわけでもないしな。
「ルシフー? どうしたの〜?」
「ウラタ様、ゼオル、起きてください。朝食だそうです」
ゼオルは叩いて、ウラタ様は軽く揺らして声をかける。
ゼオルはすぐに起きたが、ウラタ様は起きる気配がない。
仕方なく布団を引き剥がす。
すると、ウラタ様は寝ぼけたままおれに抱きついてくる。
一瞬、思考回路が停止したが、ウラタ様の拘束を解くべく、身体に力を入れる。
しかし、思いのほかがっしり掴まれているようで、狸寝入りをしているのではないかを思うくらいだ。
「ウラタ様……? 狸寝入りで臣下に抱きつくのは如何なものかと思いますが」
「……バレた?」
えへ、といたずらのバレた子供のような表情をして顔を上げる。
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のんしゅ(プロフ) - ほんとですか!? 教えてくださりありがとうございます (2022年6月30日 19時) (レス) id: e89ed18301 (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - オリジ/ナルフラグが立っているようですので、外していただくようお願いします。 (2022年6月30日 8時) (レス) id: 09c503bb24 (このIDを非表示/違反報告)
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