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「あと半日くらいか。飛ばせば6時間位でつくが」
ウラタの問いに答えると、それを聞いた彼はそんなにかかるのか、と落胆した。
もっと早く行きたいんどけどな、と言ってくれるあたり、割と魔族にも興味を持ってくれているらしい。
いや、もしかしたら飛んでる間暇だったのかもしれない。
ウラタは、明日の朝一番に出発することを決めると、オレを連れて部屋を出ていき、クレアは魔王城へ帰っていった。
◇
「ありゃ」
宿舎の、オレたちの部屋に入った時にルシフは短く声を上げる。
何があったと同じように覗けば、その部屋にはベッドが二つしかなかった。
オレたちは三人。
ベッドは人利用が二つ。
どうしたって足りない。
「じゃあ、また朝に」
「……は?」
「いやどこ行くんだ」
何事もなかったかのように扉を閉めたルシフは腰を45度に折り曲げ頭を下げ、階段のある方へ廊下を歩こうとした。
オレとウラタが少しの時間を要して状況を飲み込んで、ようやくルシフを呼び止める。
オレの問いに、何をそんな驚いているのか聞きたそうに眉をひそめる。
こっちのほうが聞きたいぐらいなんだが。
どこに行く?
ここに泊まらないで徹夜でもするつもりか?
そう訊こうかとも思ったが、ルシフは当たり前だと言ってのけそうで怖い。
「どこ、って、どこだろう」
「ルシフはここで寝ろ! ベッド使えよお前」
「無理ですね。ゼオルもああ見えて魔王ですし、ウラタ様は皇太子の身分にございますので、おれが使うわけにはいかないんです」
ルシフは首を傾げながら教科書に書かれている通りのような言葉をウラタに言う。
そんなことを言っている場合ではないのはわかっているはずだ。
それに、ルシフはいつもオレと一緒に雑魚寝をしているのだから今更だろうに。
だが、ルシフは自分が床に座るからと頑なに譲らなかった。
そこまで言われれば、なんとも言えないのだが。
身分を出されてしまっては、ぐうの音も出ない。
「ぐぅ……」
ここに出るやつがいた。
ウラタだ。
どうしてもルシフに寝てもらいたかったらしい。
まぁ、ここまでの道中、弱っているルシフしか見てなかったからそうなるのも普通か。
オレはと言われれば、全然そんなことはないのだが。
ただまぁ、オレは仕事中毒のコイツのことは心配になるが。
とはいえ、オレからしてもルシフにはぜひともしっかり休んで欲しい。
明日はオレと、ルシフとウラタの外交だ。
変なことになったら困る。
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のんしゅ(プロフ) - ほんとですか!? 教えてくださりありがとうございます (2022年6月30日 19時) (レス) id: e89ed18301 (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - オリジ/ナルフラグが立っているようですので、外していただくようお願いします。 (2022年6月30日 8時) (レス) id: 09c503bb24 (このIDを非表示/違反報告)
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