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「…っは?俺?」
佐久間が自分の方を指さすと、紳士は頷く。
「…あのさ。ふざけてます?あんたがなんなのか知らねーけど、うちのメンバー勝手に連れていかれる訳には行かないんすけど。」
そう告げた深澤の目には、微かに苛立ちが浮かぶ。それを見た紳士は、佐久間と目を合わせてこう言った。
「君に【命令】する。今すぐ私のそばに来なさい。」
水色の眼が月に反射して光る。その途端、佐久間の足は自然と紳士の方へ動き出した。更にそのピンク色だった目は片方が水色に染まっていた。
「っ佐久間くん?!何しとるんよ!」
「佐久間くん!」
康二と目黒が呼びかけるが、佐久間は振り向きもせず、3人の方へナイフを投げる。振り返った佐久間の目は虚ろだった。
「っ危なっ!佐久間くん!どうしたん?!」
「ってめぇ!佐久間に何しやがった!」
深澤が懐から短剣をだすと、紳士は目を細めてこう言った。
「君らにはもう用はない。ゆっくり眠ってくれ。」
部屋の真ん中に、3人と佐久間を分断するように、透明な仕切りが降りてくる。3人がドンドンと叩いても、ビクともしない。仕切りが降りきったその途端、天井の換気扇から白い煙がもくもくと立ち込めた。
「っ!なんやの、このけむ、り…」
「っ康二!?っ、ぁ…」
深澤が振り返ると、既に倒れた2人を仮面をつけた男2人が羽交い締めにし、引きずっていた。間もなく部屋から2人は引きずり出され、1人残された深澤は仕切り越しに紳士を睨みつける。
「そうか、毒の能力者はガスが効かないのか…」
誤算だったな。そう呟いた紳士が前に手を伸ばした途端、深澤の息が詰まる。たまらず手から短剣が転げ落ち、床に転がった。
「っが?!っは、うぁ、っぐ…って、めっ!は、っぐ、ぁっ、」
首を押さえて倒れ込んだ深澤を、水色の眼は冷ややかに見下ろすと、静かに告げる。
「…安心しろ、私たちなら君らより彼を活かしてあげられる。ああ、交換条件のこの紙切れなら、後で郵送するから安心したまえ。」
男は笑ったようにも見えた。酸欠で涙が出て視界が滲む。男の手に刻まれた不思議な紋章と、虚ろなオッドアイで自分を見つめる無表情の佐久間がぼんやり見えた。
死に物狂いでイヤモニを叩き、無線で助けを呼ぼうとするが、声は出ない。向こうから聞こえた阿部の声に、呻き声しか答えられないまま、紫色は苦しげに閉じられた。
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莉月(プロフ) - れんさん» ありがとうございます。2つ目のリクエスト了解しました! (2020年3月12日 12時) (レス) id: 3ee94531f8 (このIDを非表示/違反報告)
れん - ありがとうございます!よろしければいつもテンションが高いさっくんを見てメンバーがほっこりしてた時に考えてみたら戦う時も同じテンションなので少し恐怖を感じてしまうみんなを見てみたいです。リクエストが多くてすいません。これからも無理せず頑張って下さい (2020年3月12日 11時) (レス) id: 0e32f06a12 (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - Mikanさん» こちらこそ、リクエストありがとうございました!これからもよろしくお願いします! (2020年3月11日 20時) (レス) id: 3ee94531f8 (このIDを非表示/違反報告)
Mikan(プロフ) - リクエスト書いてくださってありがとうございます!!とても嬉しいです!これからも楽しみにしています! (2020年3月11日 20時) (レス) id: 320e7590ff (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - れんさん» 了解しました!今のリクエスト書き終わったらかかせていただきますね! (2020年3月11日 11時) (レス) id: 3ee94531f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:莉月 | 作成日時:2020年3月5日 0時