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新天地に必要なもの ページ6

廃れた神社から町の様子を見ていました。

そんな時、ある人間たちが来たんです。

度々、登山をするのに山に入ってくる人は知っていましたが、神社まで来る人は居ませんでした。

だから、びっくりしたんですよね。

その人たちは藤に気が付きました。


『ああ、なんて立派な藤だろう』
『学園の子らにもこの藤を見せてやりたい』


なんて言うので、どうするのかなって思ったんです。

何も言わず枝を折られたなら、呪い殺そうかと思いました。

けれど、その人たちはそんなことしなかった。


『私たちの学園に通う子どもたちに立派なこの藤の花を見せたい。申し訳ないが、枝を少し分けてくれないか?』


枝は折られました。

でも、不思議と怒りはなかったんです。

この人たちの所には子どもがいる。

また、人間たちと一緒にいられる。

そう思えたからでしょうね。

それから私は折られた枝に依り代を移しました。

花をつけるまで時間がかかってしまい来れませんでしたが、ここに来てからは賑やかな声が絶えなくて、とても楽しいんです。





そう話してくれた彼女は本当に楽しそうだった。

うん、良いことだよね。
こうして人間と妖怪が互いに認め合っているのは。

けれど、それと同時に“あの時”の被害者がすぐ近くに居たこと、助けられなかったことが悔やまれた。


「ハナヲさん?」
「ハナヲ? どうかしたのか?」


メリィくんと鴉くんが心配そうに俺を見ていた。


「何でもないよ。……さて、噂の正体はわかった。そう言うことなら、学園に住む妖怪同士仲良くしなくちゃね。フジヒメちゃん。改めて、ようこそ七霧学園へ」
「よろしくお願いします」


手を差し出すと、彼女は花がほころぶほどの笑顔を見せ、俺の手を取った。


「そんじゃあ、名前を決めっか!」


頭の後ろで手を組んだ鴉くんが悪戯っ子のように笑う。


「名前、ですか?」
「いいね! ボクたちの名前はハナヲさんがつけてくれたし。フジヒメのはボクたちで決めよう!」
「珍しく同じ意見じゃねーの。おれもさんせー!」
「よしっ。じゃあ、まず、フジヒメ。オマエはどんなのがいい?」
「どんなの、とは何がですか?」
「だーかーら、名前だって」
「名前ですか? いえ、私は村のみんなが呼んでくれたフジヒメが気に入ってるので……」
「もー、バカ犬のせいで勘違いさせちゃったじゃんか! フジヒメ、苗字だよ」


困ってる彼女に助け船を出すのは年長者として当然の事だよね。


「学園に通うのに必要だからね」

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作者名:桜日和 | 作者ホームページ:https://plus.fm-p.jp/u/sakura_biyori  
作成日時:2021年5月22日 16時

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