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蛇神に睨まれた木霊 ページ16

「ねぇ、どうしてキミは生徒たちに囲まれていたのかなぁ、フジヒメ?」


にっこりと笑うイリヤの手の中でフジヒメが震えているのがわかった。


「て言っても、コイツ喋られねーけど、どうするんだよ?」


ヒフミの言う通り、ちっこいフジヒメは口がねぇから話せねぇ。

どうしようかと考えていると、ハナヲが思い出したように部屋の奥へと行く。


「えーと、確かここに……あった!」


持ってきたのは一枚の紙。


「……これって」
「そう、こっくりさんを呼び出すための紙だよ!」
「なに妖怪が妖怪を呼び出そうとしてんだよっ!」
「いやー、クラスの子たちから一緒にやろうって誘われたんだけど、こういうのは本当に出て危ないからって俺が預かってたんだ」


ニコニコと腹が立つ顔をして便所幽霊はイリヤの前にその紙を置いた。

イリヤは変わらず笑えねぇ笑みを浮かべてフジヒメを見ている。

震えるコイツはまさに蛇に睨まれた蛙だ。

……まあ実際は蛇神に睨まれた木霊だが。


「これでキミの言葉がわかる」


イリヤは紙の上にフジヒメをおろすとさっきと同じ事を聞いた。


「フジヒメ、どうしてキミはその姿のまま生徒たちに囲まれていたんだい?」


紙の上でじっと動かねぇフジヒメ。


「大丈夫。別に怒ったり恐いことをしたりしないから……ね?」


もうすでに恐いじゃねぇか、と思っているとフジヒメがゆっくりと動き出した。

フジヒメはひらがなの上を跳ねながら移動し、言葉を伝えてくる。


「ふ、し、゛……あ、『じ』だね。……だ、な……ご、み。藤棚、ゴミ?」
「ひ、ろ、う……拾う!」
「言葉を繋げると……藤棚のゴミを拾ってたのか!」


正解だと言うようにフジヒメが大きく跳ねた。


「つまり、君は藤棚の周りに落ちていたゴミを拾っていたのを生徒たちに見られて囲まれたのか……」
「まー、んなちっこいのがちょこちょこと動いていたら、そりゃ集まるわな……。おれだって、犬の姿に変化してる時そうだし」
「いいかい、フジヒメ? 人間の時ならそれでいい。けれど、今のキミの姿ではとても目立つ」


イリヤの言葉にフジヒメはしゅん……と項垂れる。


「でも大切なキミの依り代だ。……だから、人間の力を借りよう」


首――いや、からだ全体――を傾げながらイリヤを見上げるフジヒメ。

妙にイヤな気配がする。


「生徒会で藤棚のゴミは拾ってもらって、全生徒にゴミを捨てないよう言ってもらうんだ」
「なっ!?」
「こんの蛇野郎っ!!」


生徒会所属のウタシロと俺の声が重なった。

閑話:木霊→←小さな引っ掛かり



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作者名:桜日和 | 作者ホームページ:https://plus.fm-p.jp/u/sakura_biyori  
作成日時:2021年5月22日 16時

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