ゆりかご

ぼくのいえ ページ1

ねっむ……。


車体を支えるポールを右手で掴んで、拳の上に頭を寄せる。
立ったままでも寝れそう、てか、ちょっとでもいいから寝たい。
目をつむった三秒後、バスの揺れに耐えきれず頭のてっぺんを柱に殴打して、怪訝そうな他の乗客の視線を浴びた。


こんばんは、深澤辰哉です。

家から10分弱バスに揺られた先にある大学病院で小児科医をやっています。
ついでに言うと今のコンディションは最悪。昨日の朝から日勤でそのまま当直やって、今日もそのまま日勤を終えて帰るとこ。
本当なら当直医師なんて横になって寝られるはずなんだけど、なぜか俺は看護師さんから「呼び出しの深澤」と不名誉な異名をつけられるほど運が悪くて、今日も例に漏れず数時間おきの呼び出しをくらったところだ。


「たぁだいま〜」

19時2分、昨日の朝ぶりに帰宅。

風呂入りたいしお腹も空いてる気がするけどとにかく今は寝たい。
玄関ドアを開けて靴を脱ぎ捨てる。


あれ、洗面所に誰かいる？

「あっ辰にぃだ！おかえり！」
「おーただいま、何してんの？」
「宿題終わったから亮ちゃんの手伝い！洗濯物持ってきて〜って」
「あれ？今日部活は？」
「今日先生たちの会議でお休み！蓮くんも！」
「へぇ〜…っておい(笑)」

まだ兄ちゃん喋ってんだけど(笑)

洗濯カゴを抱えてバタバタとリビングの方へ走っていったのはうちの末っ子の真都。
この間中学生になって、ダンス部に所属して忙しくしている。
宿題終わって手伝いってことは、まだ残りの二人は終わってないってことだな(笑)


「ただいま〜」
「あっ、おかえり〜」
「おかえり！ねぇ、これわかんない」
「だからぁ、さっきと一緒で式立てるんやって」

俺の想像は半分あたりで半分ハズレ。

ふたりとも終わってないんじゃなくて、教えてやってたのね。

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