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しばらく車を走らせて着いたのは海辺近くの一軒家だった。
「ここのオーナーとデビュー前からの知り合いでさ。
俺が来ると貸してくれるんだ。
普段使わないらしいから、鍵も借りてる。」
そう言うと、ミノは慣れたように鍵を開け、中に入る。
白く塗られたウッド調の外装に、様々な観葉植物。
海側は一面ガラス張りで、突き抜ける日差しが眩しい。
テラスへ出れば、ゆったりと座れるソファが置かれている。
道中で買ったコーヒーを手に2人で腰をかけた。
『素敵な場所だね。』
「だろ?
俺の秘密基地。」
『よく来るの?』
「んー、ぼーっとしたい時‥
そんな時に来てるかな。」
『‥こんなに長いこと一緒にいるのに、初めて知ったな。
ミノがこんな素敵な場所来てるなんて。』
「ははっ。
俺も初めて人に教えた。
メンバーも知らない、俺だけの場所。」
『‥そっか。
よかったの?私に言っても。』
「うん。
ずっとユリカを連れてきたかったんだ。
絶対、この景色好きでしょ。」
『うん、好き。
本当、綺麗。』
嬉しそうに緩む顔は、
得意気で。
ちょっとだけ引き寄せられた腰に身体を預ける。
ゆったりとした時間。
しばらく何も言わず、2人とも海を見つめていた。
もうすぐ夕暮れになるという時、
そっとミノを見上げると、落ちてきた太陽が赤く顔を照らしている。
波の音を静かに聞くそのミノの横顔は、
今まで見た姿で1番綺麗だった。
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作者名:チビ丸 | 作成日時:2023年11月14日 18時